力はベクトル、成分に分解できる
力を紙にどう描くか。矢印一本で十分です。矢印の長さが力の大きさ、矢印の向きが力の方向。だから力は一つの数ではなく、ベクトルです。大きさと向きを併せ持つ量。でも斜めの矢印は扱いにくい。そこで、横にいくつ、縦にいくつ、と二つの断片に切り分けます。これが成分分解です。斜めの力一本が、水平の力と垂直の力の和とぴったり同じになる。この一つの技が、静力学全体を支えます。釣り合いも構造物も、結局は成分で解くからです。まずは矢印を自分でドラッグしてみるところから始めましょう。
矢印の頭をつかんでドラッグしてみてください。引き出すほど矢印は長くなって力が大きくなり、頭を回すと力の向きが変わります。大きさと向き、この二つが別々に動くのが見えますね。同じ大きさでも向きが違えば、まったく別の力です。5Nで右を押すのと5Nで上を押すのとでは、結果がまるで違いますから。だから力を書くときは、大きさだけでは足りず、向きも一緒に書く。ふつうは水平から測った角θで向きを表します。
今度は斜めの矢印を二つの断片に切ります。力が横にどれだけ押すかがx成分Fx、縦にどれだけ押すかがy成分Fy。角θをドラッグすると、矢印が寝るほどFxが大きくなり、立つほどFyが大きくなります。直角三角形が見えますか。斜辺が力F、底辺がFx、高さがFy。だからFx = F cosθ、Fy = F sinθ。三角比そのままです。一本の矢印を、横の力と縦の力の二つに書き換えたわけです。
逆もできます。横の力Fxと縦の力Fyを別々に決めてやると、二つが合わさって元の斜めの力一本がよみがえります。二つのスライダーを動かしてみてください。FxとFyを長方形の二辺として置くと、対角線がそのまま合力Fです。大きさはピタゴラスでF = √(Fx² + Fy²)、向きはθ = arctan(FyFx)。分解が一つの力を二つに分けることなら、合成は二つを一つにまとめること。静力学で複数の力を足すときは、それぞれを成分に分け、横は横どうし、縦は縦どうし足して、最後にこうしてまた合わせます。
本物の構造物は平面ではなく空間にあります。でもやり方は同じ。横Fx、縦Fyに、奥行き方向のFzを一つ足すだけです。三つのスライダーで、箱の辺に沿って力を積み上げてみてください。矢印は直方体の対角線になり、大きさはF = √(Fx² + Fy² + Fz²)。2Dのピタゴラスを3Dに伸ばしただけです。次元が一つ増えても、成分に分けるという考えはそのまま。だから複雑に見える空間の力も、結局はx・y・zの三つの数できれいに書けます。
最後に、向きだけを切り離してみましょう。矢印から大きさを捨てて向きだけ残すと、長さがちょうど1の短い矢印になります。これを単位ベクトルuと呼びます。平面ではu = (cosθ, sinθ)で、長さは常に|u| = 1。角を回しても、頭はいつも単位円の上を滑ります。では元の力はどう書くか。向きuに大きさFを掛ければいい。F = F·u。向きはuが受け持ち、大きさは前の数が受け持つ。力の二つの情報を最もきれいに分けて書く方法で、斜面やケーブルのように向きが斜めのとき特に役立ちます。