エネルギーが飛び飛びだから光も線で出る
水素原子のエネルギー準位は Eₙ = −13.6 eV / n² のように飛び飛びです。電子が上の段から下の段へ跳ぶと、二つの段の差のエネルギーを光子一個として正確に放出します。E_光子 = Ei − Ef で、光子は振動数 f を持つので E = hf、波長では λ = hc / E です。段の差は決まった値だけなので、光も任意の色ではなく、ぴったり決まった波長の線として出ます。最初の図で準位のはしごと、その線がスペクトル帯のどこに刻まれるかを一緒に見ましょう。
水素の準位をはしごで描きます。Eₙ = −13.6 eV / n² なので n = 1 は深く沈み、n が大きいほど段は 0 に向かって密集します。上の段 i から下の段 f への遷移を選ぶと、その差 Ei − Ef が光子一個のエネルギーになります。ここで f はその光子の振動数(E = hf)で、λ = hc / E は光の波長です。この λ は波と粒子の講で見た物質波 λ = h/p とは異なる、光自身の波長です。可視の遷移(Hα 656、Hβ 486、Hγ 434 nm)を選ぶと、正しい色の縦線が 400 to 700 nm の帯の所定の位置に刻まれます。
下の段 f を何にするかで系列が分かれます。f = 1 へ落ちる遷移はライマン系列で紫外線、f = 2 へ落ちると可視光のバルマー系列、f = 3 へ落ちると赤外線のパッシェン系列です。セグメントで系列を選ぶと、その系列に属する遷移だけがはしご上で強調されます。私たちの目に色の線として見えるのはバルマー系列だけです。
同じ段の間でも、向きによって二通りに現れます。電子が上から下へ跳ぶと光子を放出します。これは暗い帯の上に明るい線が灯る放出スペクトルです。逆に連続光が原子を通り抜けると、ちょうどその差のエネルギーの光子だけが吸収され、明るい連続帯に黒い線が刻まれます。これが吸収スペクトルです。トグルを切り替えると、同じ波長の位置で明るい線と暗い線がちょうど反転します。エネルギー保存だけで説明できます。
一個の光子のエネルギー、振動数、波長、そして色はすべて一本の糸で結ばれています。スライダーで光子のエネルギー E を上げると、振動数 f は E = hf でそれに従って上がり、波長は λ = hc / E で縮みます。同時に画面の色が赤から紫の方へ移っていきます。エネルギーの大きい光は短い波長で紫、小さい光は長い波長で赤です。どれか一つを決めれば残りは自動的に決まります。
一つの系列の中で上の段 i をどんどん高くすると、線が一か所に集まってきます。Eₙ = −13.6 eV / n² なので段の差は上に行くほど小さくなり、i が大きいほど遷移エネルギーはある最大値に収束します。その位置が系列限界です。スライダーで i を上げると新しい線が前の線のすぐ隣に並び、線が限界に向かって密に集まるのが見えます。i が無限大に向かうと、電子がちょうど解き放たれる境界、つまりイオン化のしきい値になります。