剪断 0 の面の垂直応力が主応力だ
D1 で要素を回すと σ と τ が一緒に揺れるのを見ました。その中にとても特別な角がありました。剪断応力 τ がちょうど 0 になる角。その面を主応力面、そこに掛かる垂直応力を主応力と呼びます。なぜ重要なのか。その角で垂直応力が最大になるからです。最大の主応力 σ1 と最小の σ2、この二つの数が、一点が耐えるべき応力の両極端です。複雑に揺れていた応力状態が、結局この二つの値に圧縮されます。そしてそこからちょうど 45 度回すと剪断が最大になり、それが τmax です。この講では、その主応力と主角、最大剪断をきれいな公式に整理し、なぜ材料がその向きに壊れるのかまでつなげます。
まず主軸がどこかを定めます。主応力面は剪断が 0 の面なので、変換式の τ′ を 0 と置いて角を解けばよい。すると tan2θp = 2τxy(σx−σy) が出ます。この角 θp が主軸の向きです。大事なのは、主軸は固定ではなく、応力状態によって回るということ。τxy をドラッグしてみてください。剪断が大きくなると主軸がどんどん傾きます。剪断が 0 なら主軸はそのまま x, y 軸です。つまり主軸は、その応力状態が自ら選ぶ自然な向き。一点の応力を最も単純に見られる座標系、剪断が消えて押し引きだけが残る向きです。
次は主応力の値です。変換式に θp を入れて整理すると、驚くほどきれいな形が出ます。σ1,2 = (σx+σy)2 ± R。平均 (σx+σy)2 を中心に、半径 R だけ両側に広がった二つの値です。ここで R = √(((σx−σy)/2)² + τxy²)。τxy をドラッグしてみてください。平均はじっと動かず、R が大きくなると σ1 と σ2 が平均から両側へ大きく離れます。直感的にも筋が通ります。剪断が大きいほどその点は険しい応力状態で、その分主応力の幅が広がるのです。この平均 ± 半径の構造、どこかで見た気がしませんか。中心から半径だけ離れた二点。これが次の講のモール円へまっすぐつながります。
主応力面を見つけたら、最大剪断面はおまけです。いつも主応力面からちょうど 45 度離れた所だからです。ウィジェットで左は主応力要素。剪断の矢印がなく、σ1, σ2 だけが面を押し引きします。右はそれを 45 度回した最大剪断要素。ここには大きな剪断矢印があり、垂直応力は両面とも平均値 (σx+σy)2 で同じです。その最大剪断の大きさが τmax = R = (σ1−σ2)2。主応力の幅を半分にした値です。τxy をドラッグすると二つの要素が一緒に育ちます。まとめると、一点の応力は二つの顔を持ちます。剪断が消えて垂直応力が極端な主応力面、そして 45 度回って剪断が極端な最大剪断面です。
なぜこれほど重要なのか、破損へつなげます。材料ごとに弱点が違います。チョークや鋳鉄のような脆性材料は引っ張る力、つまり垂直引張に弱い。だから最大主応力 σ1 に垂直に割れます。引張試験片なら軸に対して横にぽきっと折れます。一方、鋼のような延性材料は滑り、つまり剪断に先に降伏します。だから最大剪断面、主応力面から 45 度傾いた面に沿って滑って切れます。ボタンで二つを切り替えてみてください。同じ引張なのに、壊れる面の向きがまるで違います。だから主応力 σ1 と最大剪断 τmax を両方求めるのが大事です。どちらが危ないかは材料が決めるからです。脆性なら σ1 を、延性なら τmax を限界と比べます。
最後に、すべてを一枚にまとめます。σx, σy, τxy が与えられたら、まず半径 R = √(((σx−σy)/2)² + τxy²) を求めます。すると主応力は σ1,2 = (σx+σy)2 ± R、主角は tan2θp = 2τxy(σx−σy)、最大剪断は τmax = R。この四行だけで一点の応力状態が完全に解けます。τxy をドラッグして、四つの値がどう一緒に動くか見てください。R がすべてを結ぶ核心の量です。R が大きくなれば主応力の幅も最大剪断も一緒に大きくなります。ところがこれらの公式、暗記して使うと符号と角でよく間違えます。だから次の講では、この四行を丸ごと一つの絵に変えるモール円を学びます。平均を中心に半径 R の円、その上ですべての変換がただの回転になる、魔法のような道具です。