回転不つり合い わかりやすく
完全につり合いのとれた回転体はなく、軸から距離 e だけずれた質量 m が角速度 ω で回ると、外向きにいっしょに回る力 F₀ = m·e·ω² が生じる。この力は回転速度の二乗で大きくなるので、手で回すときには感じもしなかった小さな偏りが、高速では機械を揺さぶる大きな力になる。洗濯機が脱水のときにその場を歩き回り、バランスをとっていない車輪が高速道路でハンドルを震わせるのは、どちらもこの力のせいである。前に扱った強制振動と同じ式に従うが、力の大きさが速度とともにひとりでに大きくなる点が違い、その違いが高速で思いがけない結果を生む。
不釣り合いが生む力は、回転とともに向きを変える力である。下の図は、軸のまわりを回る円板に質量 m が半径 e だけ偏って付いているようすで、オレンジの矢印はその質量が軸を遠心方向に引っぱる力 F₀ である。力の向きは質量といっしょに一回転ごとに回るので、軸と軸受は回転と同じ拍子で四方から交互に引っぱられる。スライダーで ω を 1 から 2 へ二倍にすると下の数は 1.00 から 4.00 と四倍になり、右端の 2.2 では 4.84 に達すが、矢印は ω = 2 で図の端に届き、それ以上は長くならない。実際の大きさでいうと、10 g の偏りが半径 0.1 m で毎分 3000 回転すると力は約 99 N で、10 kg の物体の重さとほぼ同じである。そのため速く回る機械ほど、ごく小さな不つり合いもそのままにはできない。
この回る力が、ばねの上に載った機械全体を揺さぶる。下の図では機械の質量が M、減衰比が 0.15 で、スライダーは回転の角速度を固有振動数で割った r = ωωₙ を変え、下の数 M·Xm·e は機械の振幅 X を不つり合い m·e と機械の質量でまとめた無次元の振幅である。最初の値 r = 0.6 では 0.54、左端の 0.2 では 0.04 で機械はほとんど揺れないが、それは速度が低いと力そのものが ω² に比例して小さいからである。r = 1 では 3.33 となって共振が起こり、機械は大きく揺れ、それより速くなると振幅は小さくなるものの、右端の 4 でも 1.06 で 0 にはならない。前の講の絶縁のように速いほど静かになりそうであるが、ここでは速度が上がるほど力もいっしょに大きくなるので、振幅は一定の大きさにとどまる。
回転速度を変えながら振幅を描くと、不釣り合いならではの特徴が見えてくる。下の図は同じ無次元振幅を r に対して描いた応答曲線で、最初の位置 r = 1 では 3.33、実際の頂上はそれより少し右の r = 1.02 で 3.37 である。低いほうでは曲線は r² に比例してふくらみ、高いほうでは 0 に落ちずに緑の点線である 1 に近づき、r = 2 で 1.31、r = 3 で 1.12 になる。値が 1 というのは振幅が X = m·eM で一定になるという意味で、とても速い回転では機械と偏った質量が二つを合わせた重心を軸にいっしょに回り、その重心はほとんど動かないからである。機械はいつも偏った質量の反対側に立って、合わせた重心をその場に押さえておくようなもので、これを自己中心化という。共振や絶縁で見た曲線は右端で 0 まで下がったが、この曲線は 1 にとどまるので、不つり合いでは速く回すだけでは振動をなくせない。
解決策は、力の根である m·e をなくすことである。下の図のスライダーで偏った質量のちょうど反対側に釣り合いおもりを大きくしていくと、二つの質量の m·e が打ち消し合い、オレンジの矢印と残る m·e の数がいっしょに小さくなる。釣り合いおもりが 0% のとき 1.00 だった残りの不つり合いは 50% で 0.50 になり、90% を超えるとつり合い完了の表示が出るが、このときも残りの値はちょうど 0 ではないので、実際の機械は許容残留不つり合いという限度の中に入るように合わせる。自動車の車輪のリムに付ける小さな金属のおもりがまさにこの釣り合いおもりで、バランス試験機で車輪を回しながら揺れを測ると、おもりを付ける位置と重さがわかる。軸方向に長いロータは一つの面だけで合わせると軸を傾けようとする偶力が残るので、二つの面におもりを分けて付ける動つり合わせを行う。
同じ m·e·ω² が、あちこちで厄介ごとを起こす。下の図のボタンで洗濯機、自動車のタイヤ、タービン·ロータを選ぶと、図は同じ偏った円板のままで、下の説明だけが変わる。洗濯機では脱水を始めるときに洗濯物が片側に偏ると m·e が大きくなり、回転が速くなって共振を通るあいだに大きく揺れて床の上を歩き回ることもあるので、多くの洗濯機は回転を上げる前にゆっくり回って洗濯物を均等に広げる手順を踏む。自動車の車輪は高速で揺れがハンドルに伝わるので、ホイールやタイヤを替えるたびにバランスをとり、毎分数千回以上回るタービンや発電機のロータは、ごく小さな不つり合いも大きな力になるので精密に合わせる。結局、処方は二つで、m·e そのものを減らすか、共振をすばやく通り過ぎてそれよりずっと高い速度で運転し、そのうえで始動と停止のたびに一度ずつ共振を通ることを見込んでおくかである。