境界層がはがれると抗力が大きくなる
同じ速度で進んでも、板は空気を強く押しのけ、しずく形はなめらかに切り裂いて進みます。その違いは、流れが後ろではがれて残す後流にあります。物体の後ろで流れがどう分かれるか、速度をドラッグしてみましょう。
流れは丸い物体の前をなめらかに包み込みますが、後ろのある点で表面についていけずはがれます。その後ろに遅く渦巻く後流(wake)ができます。この後流の中は圧力が低いので、前の高い圧力が押し、後ろの低い圧力が押し返せず、物体は下流へ引かれます。これが圧力抗力です。速度をドラッグすると後流が激しくなります。
同じ正面面積でも、形が後流の大きさを決めます。ボタンで切り替えてみてください。鈍い物体(板・円柱)は流れが早くはがれて広い後流と大きな抗力を作り、流線形(しずく)は後ろがなだらかで流れが最後まで付き、後流がほとんどなく抗力が小さいです。だから飛行機・魚・車はみな後ろを長く伸ばします。
なぜ流れははがれるのでしょう。物体の後ろでは流れが広がって遅くなり、圧力がむしろ高くなる逆圧力勾配が生じます。壁の近くの遅い層はこの上り坂の圧力に勝てず、止まってから逆向きに流れ、表面からはがれます。逆圧力勾配の急さをドラッグすると、剥離点が前に引かれ、逆流域が大きくなります。
抗力の大きさは一つの式にまとまります。FD = ½ ρ v² CD A。流体密度 ρ、速度の二乗 v²、抗力係数 CD(形・剥離が決める)、正面面積 A の積です。速度 v をドラッグすると抗力が v² で跳ね上がります。速度を二倍にすると抗力は四倍。だから高速では空気抵抗が支配的になります。
ゴルフボールにはなぜくぼみ(ディンプル)があるのでしょう。滑らかな球は層流境界層が早くはがれ、広い後流と大きな抗力を作ります。ディンプルは境界層をわざと乱流にし、乱流の境界層は逆圧力勾配によりよく耐えて、はがれるのが遅くなります。すると後流が縮み、圧力抗力が大きく下がります。表面摩擦は少し増えますが、後流の減少のほうがはるかに大きく、ディンプルの球は遠くへ飛びます。ボタンで後流と抗力を比べてみてください。次の講では、これらすべての流れ現象を無次元数でまとめる次元解析へとつないでいきます。