大定理の本当の舞台は三次元だ
L6 ではガウスとストークスの定理を、平面上の円として見ました。でもそれは本当の姿の、平たい影でした。本来の舞台は三次元です。発散定理は平面の円ではなく空間の球で、境界は縁ではなく曲面です。ストークスの定理は平らな円板だけでなく、同じループにかぶせたどんな曲面でも通ります。この講では画面を自分の指で回して、曲面の上に法線がどう立ち、フラックスが面をどう通り抜け、内部の総和が境界とどう等しくなるかを立体で見ます。平面で覚えた二行が、体積と曲面の上でもう一度よみがえります。
まず曲面とは何かを立体で見ます。画面に鞍の形のシート z = 0.4(x² − y²) が浮かんでいます。一方向には上がり、直角方向には下がる、馬の鞍のような曲面です。画面を指で引いて回してみてください。平らな絵に見えていたものが、じつは空間に浮かぶ二次元のシートだと分かります。曲面上の一点には、法線の矢印 n̂ が垂直に立っています。どの点でも、その場のシートにちょうど垂直な向きです。スライダーで鞍をもっと曲げると、法線もつれて傾きます。曲面は面であり、その上のどこにでも法線を一つ立てられること、これが曲面積分の出発点です。
今度はその曲面を流れの中に置きます。上へ一様に流れる場 F = [0, 0, 1.4] があり、平らな四角いシートがその流れの中に浮かんでいます。シートには外向きの法線の矢印が刺さっています。曲面フラックス ∫∫ F·n̂ dS は、このシートを通り抜けて出ていく流れの総量です。面の上の小さな片ごとに F·n̂ にその片の面積を掛け、すべて足した値ですね。傾きスライダーを動かして、シートを流れに正面で向けたり、横に立てたりしてみてください。流れを正面で受けるときフラックスは最大、流れと並んで横を向くとほぼ0まで落ちます。画面を引いて回すと、法線と流れがなす角が立体で見えます。フラックスは結局、面が流れをどれだけ正面で受けるかです。
さあ発散定理の本当の舞台です。L6 の円は、じつは球の影でした。場は F = [x, y, z]、原点から四方へ伸びる流れで、発散はどこでも ∇·F = 3 です。画面には半透明の球が浮かび、表面には外向きの法線の矢印が並びます。半径スライダーで球を大きく小さくしてみてください。二つの数がいっしょについてきます。境界 = 球面を通り抜けて漏れ出る総フラックス ∮∮ F·n̂ dS、内部 = 球の中の発散をすべて足した体積積分 ∭ ∇·F dV。どの半径でも二つはほぼ一致します、どちらも 4πR³ だからです。画面を引いて回すと、球の向こう側の矢印まで見えます。平面の縁が曲面の表面へ、面積が体積へと一次元ずつ上がった、同じ定理です。
ストークスの定理は 3D で本当の力を見せます。場は F = [−y, x, 0]、平面で反時計回りに回る渦で、回転は ∇×F = (0, 0, 2) です。画面には z=0 平面に閉じた円形ループがあり、縁に沿って接線の矢印が回ります。トグルを押してみてください。このループにかぶせる蓋の曲面を、平らな円板と上へ膨らむドーム(半球)の間で切り替えます。要点はこれです。二つは形がまったく違うのに、同じループを境界に持ちます。境界 = ループを回る循環 ∮ F·dr、曲面 = 蓋を通り抜ける回転フラックス ∫∫ (∇×F)·n̂ dS、二つはほぼ一致し、蓋を円板にしてもドームにしてもその値は変わりません。半径スライダーでループを大きくし、画面を引いて回してみてください。循環は境界だけで決まり、その境界をふさぐどんな曲面を通っても回転の総和は同じです。
最後に、2D と 3D を一つの画面で重ねます。トグルで二つのモードを行き来します。3D を点けると、外向き法線で囲まれた球(ガウス)や、蓋をかぶせたループ(ストークス)が立体で浮かびます。2D を点けると、それが平たくなって、L6 で見たまさにあの絵になります。平面上の円に外向きの矢印が囲むガウス、または接線の矢印が回るストークス。内側のトグルでガウスとストークスも切り替えられます。引いて画面を回すと、立体だった球とループが横に倒れて、どう平面の絵に崩れるかが見えます。L6 の 2D 定理は間違いではなく、この 3D 定理を z 軸から見下ろした影だったのです。∮∮ F·n̂ dS = ∭ ∇·F dV と ∮ F·dr = ∫∫ (∇×F)·n̂ dS、二行がベクトル解析の全体を閉じます。