seegongsik
単語帳
工業数学

級数は遠ざかると崩れる

べき級数は収束半径の内では一つの値に集まり外では発散する、比判定と境界

べき級数は x のべき乗を無限に足し合わせた式です。1 + x + x² + x³ + ... のように。無限に項を足すのに、なぜ有限の値になるのでしょう。秘密は距離にあります。中心から半径 R の内側では項が十分速く小さくなり、和は一つの値へ集まります(収束)。しかし R の外へ出ると項はかえって大きくなり、和は際限なく膨らんで爆発します(発散)。この境となる距離 R を収束半径と呼びます。最もきれいな例が等比級数 1 + x + x² + ... = 1/(1-x) で、ここでは R=1。ちょうど境界上の x=±R は、別途調べねばならない微妙な場所です。この講では、部分和が内側で張り付き外側で跳ね上がる様子、比判定で R を定める方法、そして境界の微妙さまで、自分の手で触れてみます。

金が部分和 SN(x) = 1 + x + ... + xN、灰が真の極限 1/(1-x) です。項数 N を上げてください。区間 (-1, 1) の内側では、N が大きいほど金がぴたりと灰に張り付きます。ところが |x|>1 側では正反対。N を上げるほど金はいっそう急に上下へ跳ね、灰から離れていきます。発散です。観測点 x も動かしてみましょう。点が帯の内側なら S は 1/(1-x) へ収束し、外側なら発散と表示されます。この一枚の絵に、距離によって級数が生きも死にもするという本講の核心がすべて詰まっています。

半径はどう求めるのでしょう。比判定が答えです。連続する二項の大きさの比 |次の項 / 今の項| を見ます。Σ xⁿ ではこの比が常に |x|、一定です。棒は項の大きさ |x|ⁿ。x スライダーを動かしてください。|x|<1 なら比は1未満で棒は順に縮み(緑・収束)、|x|>1 なら棒はどんどん大きくなります(赤・発散)。比がちょうど1になる |x|=1 こそ収束と発散の境、すなわち半径です。比判定はこの境界そのものでは沈黙します。それは次の二つのブロックで別に扱います。

今度は半径を数直線の上で直接つかみます。級数 Σ(x/a)ⁿ の収束半径は R=a です。中心0の周りの金の帯が収束区間 (-R, R)。半径スライダーを上げると帯が広がり、下げると狭まります。観測点 x を動かしてください。点が帯の内側なら緑(|x|<R、収束)、外へ出れば赤(発散)に変わります。収束は結局、距離 |x| が半径 R より近いか、という単純な一行の条件です。正でも負でも絶対値だけを見るので、収束領域は常に中心に対称な区間になります。

半径が同じでも、境界での運命はそれぞれ違います。三つの級数を選んでください。どれも半径は1ですが、境界 x=±1 での振る舞いが異なります。Σxⁿ は両端とも発散。Σxⁿ/n は x=-1 では交互に足され打ち消し合って収束しますが、x=+1 では調和級数となって発散します。Σxⁿ/n² は項がより速く小さくなり、両端で収束します。棒は部分和が流れていく推移です。一つの値に落ち着けば収束、いつまでも流れたり振れたりすれば発散。境界は比判定が手を離す場所なので、こうして級数ごとに別々に調べねばなりません。

最後に、錨となる等比級数へ戻ります。1 + x + x² + ... = 1/(1-x)、ただし |x|<1 のときだけ。一本の棒が項 xⁿ で、上から積み重なり、合計が緑の点線の位置、すなわち 1/(1-x) へ集まります。比 x を 0.6 のような正の値にすると、棒は同じ側で次第に短くなり一つの値に落ち着きます。x を負にすると棒が基準線の左右に交互に立ち打ち消し合いますが、それでも |x|<1 なので結局一つの値に集まります。この絵が示すのがべき級数の本質です。項が十分速く小さくなってこそ、つまり距離が半径の内にあってこそ、無限和は有限になります。

実際に使うべき級数 Σ aₙ xⁿ は、中心の周りの収束半径 R の内側(|x|<R)でのみ有限値に収束し、外側(|x|>R)では発散します。R は比判定で求めます。連続する項の大きさの比の極限が1未満なら収束、1超なら発散。境界 x=±R そのものでは比判定が沈黙するので、級数ごとに別途調べねばなりません。同じ半径1でも運命は分かれ、Σxⁿ は両端発散、Σxⁿ/n は片端のみ収束、Σxⁿ/n² は両端収束です。錨となる例が等比級数 1+x+x²+...=1/(1-x)(R=1)。結局、核心は一行です。距離が半径の内にあってこそ、無限和は生き残るのです。
工業数学
このページがお役に立ったなら支援する