seegongsik
工業数学 わかりやすく

発散 divergence とは

一点から純粋に漏れ出す量、湧き出しは正・吸い込みは負、小さな輪のフラックスが発散

一点を囲んで、ごく小さな円を描いたとしましょう。そのまわりから入ってくる量より出ていく量が多ければ、その点は何かを噴き出していることになります。これが発散、つまり一点から正味で漏れ出す量です。出ていくほうが多ければ湧き出し (source)、入ってくるほうが多ければ吸い込み (sink)、両方が同じなら 0 で、流れはただ通り過ぎます。式で書けば、横の成分が東へ広がる度合い (∂u/∂x) に、縦の成分が北へ広がる度合い (∂v/∂y) を足したものです。工学では、どこが漏れ、どこに集まり、どこが圧縮されるのかを、この一つの数で指し示します。

場の上で探針をドラッグすると、その場所を囲む点線の輪に、見本の矢印が八本並びます。矢印が外へのびていれば流れが漏れ出している場所で、内へ集まっていれば吸いこまれている場所です。原点の近くに置くと四方へ広がって発散が正になり、輪が金色の湧き出し (source) として光ります。外へ遠く引くと矢印が内へ曲がって発散は負に転じ、青い吸い込み (sink) に変わります。そのあいだのどこか、半径 2.45 ほどの輪では、出入りする量がちょうど釣り合って発散が 0 になります。下には、いまの場所の発散の値が表示されます。

ボタンを押すと、三つの場が順に切り替わります。湧き出しではすべての矢印が原点から外へのびて発散は +1.2 で正、吸い込みではすべて内へ集まって −1.2 で負です。渦では矢印がまわりに沿ってくるりと回り、入る分だけ出ていくので、発散はちょうど 0 です。核心は、回転がどれほど強くても発散とは無関係だということです。発散は回るかどうかではなく、広がるか集まるかだけを見ます。下の大きな数が符号といっしょに変わることに、それが表れています。

発散も結局は二つの部品の和です。探針をドラッグすると、横の成分が東へ広がる度合い(∂u/∂x、緑)と、縦の成分が北へ広がる度合い(∂v/∂y、オレンジ)が、それぞれ棒で表示されます。二本の棒を足したものがそのまま発散で、原点ではどちらも +1 ほどなので和は +2 になり、強い湧き出しです。外へ引くと一本ずつ負へ折れて和が小さくなり、遠くへ行くと両方が負になって吸い込みに変わります。「∂u/∂x + ∂v/∂y = ∇·F」という一行が、数として生きて動いているわけです。

発散の本当の定義は、まわりを通り抜ける流れ、つまり流束です。円の中心をドラッグし、半径のスライダーを動かすと、まわりの各点で外向きの法線の向きに流れがどれだけ漏れるかが矢印で表されます。まわり全体を足したものが総流束 Φ で、それを円の面積で割った Φ/面積 が、その中の平均の発散です。円を小さくするほど Φ/面積 は中心での ∇·F の一つの値に収束し、下の三つの欄のうち最後の二つがだんだん同じになります。だから発散は、ごく小さなまわりで単位面積あたりに漏れ出す量という、絵でとらえられる量なのです。

今度は発散を一点ではなく場全体で見ます。スライダー s を動かすと、場が F=[s·x − x³/9, s·y − y³/9] となめらかに変わります。背景の色がそのまま発散の地図で、金色は湧き出しなので正、青は吸い込みなので負、そのあいだの境界線が発散 0 の輪です。s を大きくすると原点の広がりが強くなって金色の領域が広がり、0 の輪は外へ押し出されます。s を小さくすると金色が縮み、青い吸い込みが内側まで満ちてきます。下にはその輪の半径が表示されます。取っ手一つで、湧き出しと吸い込みの境界を丸ごと動かしているわけです。

実際に使う発散 ∇·F = ∂u/∂x + ∂v/∂y は、一点から正味で漏れ出す量です。正なら流れが広がっていく湧き出し、負なら集まってくる吸い込み、0 なら出入りする量が同じで非圧縮です。回転とはまったく別物なので、どれほど強く回る渦でも発散は 0 でありえます。本当の定義は、ごく小さなまわりを通る流束を面積で割った極限です。工学では、流体がどこで漏れて集まるのか、熱源がどこにあるのか、流れが圧縮されているのか膨張しているのかを、この一つの数が指し示します。次の講では、同じ場が広がりではなくどう回るのか、つまり回転 (curl) を見ます。
← 工業数学 わかりやすく
このページがお役に立ったなら支援する