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工業数学 わかりやすく

確率分布 とは

離散は PMF の棒、連続は曲線の下の面積が確率、標本↑で密度に収束、CDF は累積

前の講で、確率は面積だと述べました。けれども一つの事象の確率だけを語るのでは、絵の半分にすぎません。本当に知りたいのは、どの値がどれだけよく出るのか、確率が起こりうる値の上にどう広がっているのかです。その広がりの全体の形が分布です。さいころ二つの和は 7 のあたりがよく出て、2 や 12 はめったに出ません。この「よく」と「めったに」の全体の地図が分布で、棒グラフに描くと山が見えます。値がとびとびの離散なら棒の一本一本が確率で、値が連続なら棒が限りなく細かくなって、なめらかな曲線である密度になります。ここで決定的なことが一つあります。連続分布では、曲線の高さではなく、曲線の下の面積が確率なのです。前の講の「面積 = 確率」が、そのまま続いているわけです。この講では、分布を棒から曲線へ、そして面積へと実際に描きながら、確率がどう広がるのかを目で身につけます。

まず、値がとびとびの離散分布から見ます。さいころ一つなら 1 から 6 まで同じく 16 ずつなので、棒が六本、同じ高さで並びます。ところがさいころ二つの和を見ると、形ががらりと変わります。和が 7 になるのは (1,6)(2,5)(3,4)(4,3)(5,2)(6,1) の六通り、和が 2 になるのは (1,1) の一通りだけです。だから 7 は 636 で高く、2 と 12 は 136 で低い、真ん中が盛り上がった三角形になります。棒一本一本の高さがその値の出る確率で、これを確率質量関数 PMF とよびます。タブで二つの場合を行き来でき、棒を押すとその値の確率が分数で棒の上に表示されます。核心は、すべての棒の高さを足すとちょうど 1 になるという点です。どんな値でも必ず一つは出るからです。分布とは、全体の確率 1 を起こりうる値にどう分け与えるかという問題なのです。

値が連続だとどうなるでしょうか。身長や体重、測定誤差のように、結果が途切れなく続くときです。こうなると、棒を一本ずつ数えることに意味がありません。ちょうど 173.4825...cm になる確率は事実上 0 だからです。かわりに標本を集め、区間ごとにまとめてヒストグラムを描きます。下のトラックで標本数 N を増やすと、変化がはっきりします。N が小さいうちは青い棒がでこぼこで荒いのですが、N を大きくするほど偶然のでこぼこが平均されて消え、棒の輪郭が一本の金色の曲線にだんだん近づきます。この曲線が確率密度関数です。ヒストグラムは有限の標本でつくった近似で、標本を限りなく集めたときの理想の形が密度曲線です。つまり密度曲線は、値が連続のときの PMF、棒を限りなく細かく刻んでつないだなめらかな版なのです。データを多く集めるほど、その背後に隠れた本当の分布が姿を現します。

密度曲線から確率はどう読むのでしょうか。ここが、いちばん多くの人がつまずくところです。曲線の高さは確率ではありません。連続では一点の確率が 0 だからです。かわりに、確率は曲線の下の面積として読みます。X が a と b のあいだにある確率は、a から b までの曲線の下の面積です。緑とオレンジの二つの境界をドラッグしてあいだの区間を広げると、塗られた面積が大きくなり、下に表示される確率も大きくなります。山の高い真ん中を含めば同じ幅でも面積は大きく、すその平らなところでは幅が同じでも面積は小さくなります。だから真ん中の値がよく出るのです。曲線全体の下の面積はちょうど 1 で、前の講で板全体が 1 だったのとまったく同じです。結局、連続分布の確率とは面積を測ること、つまり積分です。微積分の積分は、確率でこのように使われます。

分布は広がり方の形によって種類が分かれ、形ごとに似合う状況があります。タブで三つの代表的な分布を見ます。一様分布は、曲線が平らな長方形です。決まった区間の中ならどこでも同じように出るとき、たとえばコンピュータがつくる乱数や丸め誤差がそうです。指数分布は、はじめがいちばん高く、右へ行くほどがくんと下がる形です。次の事象までの待ち時間、部品が故障するまでの時間、客が到着する間隔のように、短い待ちはよくあり、長い待ちはめったにない場合に現れます。正規分布はあの有名な釣鐘形で、真ん中がいちばん高く、左右対称になめらかに下がります。身長、試験の点数、測定誤差のように、たくさんの小さな要因が足されて生じる自然なばらつきは、たいていこの形です。タブごとに、図の下にその分布が現れる場面が一行で書かれています。分布の形がわかれば、データがどうふるまうかを前もって見当をつけられます。

最後に、密度と対になるもう一枚の絵があります。累積分布関数、略して CDF です。密度が各値の近くに確率がどれだけ集まっているかを表すのに対し、この関数はある値以下の値が出る確率、つまり左端からその値まで積み上げてきた累積の確率を表します。絵で見るとすっきりします。上は金色の密度曲線、下は青い累積の曲線です。取っ手をドラッグすると、上ではその位置までの面積が塗られ、下ではその面積の値が一つの点として打たれます。つまり CDF(x) は、ちょうど密度曲線の下のその位置までの面積です。取っ手を左端から右端へ動かすと、面積をどんどんかき集めていくので、累積の曲線は 0 から始まり、一度も下がらずに 1 まで上がります。密度の山が高い区間では累積の曲線が急に、すそではゆるやかに上がります。二つの曲線は、同じ分布を別の見方で見た一組です。密度は傾き、累積の曲線はその傾きを積み上げた面積なので、微分と積分の関係がここでもそのまま成り立ちます。

実際に使う分布とは、確率が起こりうる値の上にどう広がっているかの全体の形です。離散なら確率質量関数 (PMF) の棒で表し、各棒の高さがその値の確率で、合計は 1 です。連続なら確率密度関数で表し、曲線の高さではなく曲線の下の面積が確率なので、P(a≤X≤b)=区間の面積、全体の面積は 1 です。標本を多く集めると、ヒストグラムは密度曲線に収束します。代表的な分布は、一様 (区間内で均等)、指数 (待ち時間・故障)、正規 (多くの要因の和・釣鐘形) です。CDF はその値までに積み上がった累積確率 = 密度の下のその値までの面積で、0 から 1 まで単調に増加し、密度とは微分・積分の関係にあります。工学では、これが信頼性 (故障時間の分布)、品質管理 (工程のばらつき)、信号の雑音、通信の誤り率、在庫・待ち行列の設計の言葉です。測定値にはいつもばらつきがあるので、一つの数ではなく分布で考えることが工学的な考え方の核心です。次の講では、分布を二つの数で要約する期待値と分散、つまり重心と広がりへ進みます。
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