行列式は体積へと広がる
2x2 行列式が面積だった、覚えていますよね。では行列が 3x3、4x4 と大きくなったらどうするのか。絵がまるごと変わるのではなく、次元が一つずつ上がるだけです。3x3 は平行六面体の体積、n x n は符号つきの n 次元体積です。問題は大きな行列式をどう計算するかですが、答えは意外に素朴です。一つの行に沿って、より小さな行列式の符号つきの和に分けます。足して引いて足して、+,-,+ の市松模様の符号で。これが余因子展開です。この一つの道具から、クラメルの公式も、行列式がなぜ多重線形で交代的なのかも、二つの列が等しいとなぜ 0 になるのかも、すべて流れ出てきます。
3x3 行列式を自分の手で展開してみましょう。ボタンで一番上の行を一マスずつ歩きます。j 番目のマスを選ぶとその項が点灯し、その項のある行と列をまるごと消します。残る 2x2 がその項の小行列式で、その小さな行列式は私たちがすでに知っている面積です。各マスには +,-,+ の符号が交互につきます。だから完全な行列式は a11 かける M11 引く a12 かける M12 足す a13 かける M13 です。一歩ずつ踏むと累積和が育ち、最後にちょうど det に着きます。大きな行列式が小さいものの符号つきの和に分かれる、これが核心です。4x4 なら同じことをもう一層深くやるだけです。
余因子には部品が二つあります。小行列式と符号です。格子のどのマス aij でも押してみてください。そのマスが強調され、その行 i と列 j を消した残りの 2x2 小行列式 Mij が現れます。その隣に符号 (-1)i+j が出ます。行番号足す列番号が偶数なら +、奇数なら - です。だから符号は左上から市松模様のように +,-,+,- と敷かれます。小行列式にこの符号を掛けたものが余因子 Cij = (-1)i+j Mij です。前のウィジェットの展開は結局、一番上の行に沿って aij かける Cij をすべて足したものでした。どの行で展開しても、どの列で展開しても、同じ det が出ます。符号板がそれを保証します。
今度は行列式で連立方程式を解きます。A x = b で A は固定された可逆行列、スライダーで右辺 b1, b2 を決めます。クラメルの公式は答えを行列式の比で与えます。x1 は A の 1 列目を b に置き換えた行列の行列式を det(A) で割ったもの、x2 は 2 列目を b に置き換えた行列式を det(A) で割ったものです。置き換えた二つの行列を平行四辺形の面積で見せます。分子の面積が分母の面積の何倍かが、そのまま x です。b を動かすとその平行四辺形が育ったり縮んだりし、x1, x2 が追って変わります。行列式が体積なので、連立方程式の答えが体積の比で出る、これがクラメルの精神です。det(A) が 0 に近づくと分母が消えて答えが暴発するのも見えるでしょう。
行列式の符号が何を意味するか、スライダーで自分の手で感じてみましょう。2x2 行列を動かすと、単位正方形の像である平行四辺形も一緒に動きます。その平行四辺形の面積が行列式の絶対値 |det| です。符号は向きです。î から ĵ への回転が反時計回りなら det は正、時計回りなら負です。スライダーをそっと振って、二つの矢印の回転が裏返る瞬間を見てください。その瞬間、|det| は 0 を通り、符号が + から - に変わります。2 次元では符号つきの面積、3 次元では符号つきの体積、n 次元では符号つきの n-体積です。大きさはどれだけ増えたか、符号は裏返ったか。行列式一つが両方を担います。
最後に行列式の性格二つです。多重線形で、交代的です。トグルで二つの列を入れ替え(swap)てみてください。符号がただ裏返ります。det は同じ大きさなのに + が - になります。これが交代性です。次にスライダーで一つの列をもう一つの列の方へ回してみてください。二つの列がだんだん並んでいき、完全に重なる瞬間、平行四辺形が一本の線につぶれて det が 0 になります。二つの列が等しいと行列式は必ず 0 です。交代性の当然の帰結です。等しい二列を swap しても符号が変わるはずなのに、同じものを入れ替えたので変化がないはず、すると det = -det、つまり det = 0 だからです。体積で見るともっと簡単です。二つの辺が一方向に重なると平たくなり、体積がなくなります。