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単語帳
工業数学

行列式は面積の倍率だ

学校で行列式を習ったとき、ad 引く bc って、ただ暗記しましたよね。でも、それが一体何を意味するのかは、誰も教えてくれなかったはずです。実は行列式って、すごく直感的な数なんです。その変換が面積を何倍にするか、ただそれだけなんです。det が3なら、どんな図形も面積が3倍。det が0なら、ぺちゃんこにつぶれた状態。この一文が入ると、ad 引く bc の公式も、なぜ逆行列が存在しないときがあるのかも、ぜんぶ同じ絵から出てきます。

面積が何倍に変わるか、どう測ればいいでしょう? 基準になる図形を一つ決めて、それがどれだけ大きくなるか見ればいいんです。いちばんきれいな基準は、î と ĵ が作る単位正方形。面積はちょうど1です。さて、行列を適用すると î と ĵ が動きますね。5講を覚えていますか? 行列の二つの列が、î と ĵ の行き先でした。だからこの正方形は平行四辺形にゆがみます。スライダーを動かしてみてください。その平行四辺形の面積、それが行列式です。最初の面積が1だったので、変わった面積がそのまま「何倍になったか」であり、それが det なんです。そしてこの平行四辺形の面積を座標から計算すると、ちょうど ad 引く bc が出てきます。学校で暗記したあの公式は、実はこの面積を求める式だったんです。

a1.5
b0.5
c0.3
d1.2
[
1.50.50.31.2
]
det = 1.65面積 = |det| = 1.65

「単位正方形だけの話じゃないの?」と思うかもしれません。いいえ。どんな図形を置いても、面積は同じ比率で変わります。丸でも、ぎざぎざの形でも、細かい小さな正方形にたくさん分けて考えれば、結局みんな同じ倍率で伸びるからです。だから行列式は、ある一つの図形の性質ではなく、空間全体に同じようにかかる「面積の倍率」一つなんです。図形を変えながら確かめてみてください。形は違っても、倍率は変わりませんね。

a1.3
d1.1
△ ×1.55◇ ×1.55|det| = 1.55
どの面積も ×|det|

ところで、面積は正のはずなのに、行列式がマイナスになることがあります。マイナスの面積って、どういう意味でしょう? 空間が裏返ったという意味です。紙をひっくり返すと、文字が鏡のように左右逆になりますよね。変換も同じです。î から ĵ へ反時計回りに回っていたのが、裏返ると時計回りになります。その「向きが反対になった」を、マイナスの符号がとらえているんです。つまり行列式一つに、大きさ(面積の倍率)と向き(裏返ったか)の両方が入っているわけです。スライダーで符号をマイナスまで振って、正方形が裏返るのを見てください。

d1.1
det = 1.62↺ 正方向

さて、いちばん大事な場合です。スライダーをそっと動かして、行列式を0にしてみてください。平行四辺形がだんだん平たくなって、ついに一本の線につぶれます。面積が0になったんです。2次元が1次元につぶれたわけです。ここがポイント。一度こうして平たくなると、元に戻す方法がありません。その線の上に集まった点だけを見ても、元の平面のどこから来たのか分からないんです。別々の点が同じ場所につぶれてしまったから。「行列式が0なら逆行列がない」というあの怖い言葉は、実はこの絵なんです。つぶれたものは伸ばせません。この話は次の講(連立方程式、逆行列)でちゃんと続きます。

det1.00

変換を続けて二回やったら、面積はどうなるでしょう? 難しく考えることはありません。まず面積を2倍にする変換をして、次に3倍にする変換をすれば、最終的な面積は2かける3で6倍です。だから行列を掛けたものの行列式は、それぞれの行列式を掛けたものと同じになります。det(AB) = det(A) かける det(B)。ふつうはこれを公式として暗記しますが、「倍率は掛け算される」と思えば当たり前ですよね。二つの変換を順番にかけて、面積の倍率が積として出てくるのを確かめてみてください。

× I
面積 = 1.00
det(A)·det(B) = 1.35·1.34 = 1.81 = det(B∘A)
実際に使うこれで行列を見れば、行列式一つで三つのことがひと目で分かります。面積を増やすか減らすか(大きさ)、空間を裏返すか(符号)、元に戻せるか(0かどうか)。実務でいちばんよく使うのは、0かどうかのチェックです。行列式が0なら、その変換は平たくつぶれているので逆行列がなく、連立方程式でいえば、きれいな答えが出ないという合図です。工学で行列に出会ったら、まず det を見る。この習慣ひとつで半分は勝ちです。
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