ニュートンの第二法則 わかりやすく
なめらかな床の上の箱を押すとします。押す力 F を大きくするほど箱には速度が早くつき、そのままにしておけば動かず、軽く押せばゆっくり、強く押せば急に速くなります。力がつくるのは速度ではなく加速度です。正確には、物体にはたらくすべての力をベクトルとして足した合力が加速度を決めるので、いくつもの力が同時にはたらいても、その和一つだけを見ればよいのです。合力と加速度を結ぶ関係がニュートンの運動の第二法則(ΣF = ma)で、質量 m、つまり同じ力を受けてもどれだけ加速されにくいかを表す量が、慣性の大きさです。この一行が、古典力学で力と運動を結ぶ橋になっています。
なめらかな床の上の箱に、スライダーで力 F、つまり金色の矢印の大きさを与えます。F が大きいほど箱の上の橙色の矢印が表す加速度 a も大きくなり、二つは比例するので、F を二倍にすれば a も二倍になります。式では a = Fm、書き直せばおなじみの F = ma です。ここで大事なのは、力が決めるのは速度ではなく加速度だという点です。力を加えれば速くなり、力を取り去れば、速くも遅くもならずにその速度のまま進み続けます。力が 0 なら加速度も 0 で、静止でも等速でもいまの状態が続きます。これが慣性の法則であり、第二法則の出発点です。
実際には、一つの物体にいくつもの力が同時にはたらきます。図の箱には左へ押す青い力が固定されていて、右へ押す金色の力をスライダーで調整すると、加速度を決めるのは個々の力ではなく、二つを足した合力だということがわかります。右の力が強ければ合力が右に残って緑の加速度の矢印が右を指し、左が強ければ矢印は赤に変わって左を指します。二つの力が等しければ合力は 0 で加速度も 0 になり、両側から押されているさなかでも、物体は等速で進むか止まったままです。だから第二法則の F、つまり ΣF はいつもすべての力のベクトル和を意味し、一つ一つの力ではなく、その和だけが運動を変えます。
合力を正しく求めるには、物体を一つだけ切り離し、そこにはたらく力をもれなく描く必要があります。これを自由物体図(FBD)といいます。ボタンで状況を切り替えると、場合ごとに矢印が変わります。床に置いた箱には、下向きに重さ mg、上向きに垂直抗力 N がはたらき、上下がつり合います。天井につるしたおもりでは重さ mg と糸の張力 T が向き合い、押される箱ではそこに押す力と摩擦が加わります。その物体に直接触れて加わる力(接触力)と、離れていてもはたらく力(重力など)だけを描き、物体がほかのものに及ぼす力は描かない、というのが規則です。こうして集めた矢印を方向ごとに足すと合力が得られ、それを質量と加速度の積 ma と等しいとおけば運動方程式ができます。
今度は力を固定して質量を変えます。同じ力で押しても、軽い物体はたやすく速くなり、重い物体はなかなか動きません。質量 m のスライダーを動かすと箱が大きくなり、橙色の加速度の矢印が a = Fm に従って反比例で短くなります。質量を二倍にすると、同じ力に対する加速度は半分になります。だから質量は単なる重さではなく、運動の状態が変わることに逆らう度合い、つまり慣性の大きさです。空のショッピングカートは軽く押すだけでさっと進むのに、いっぱいのカートは力いっぱい押してやっと動くのと同じ話で、合力が同じでも質量が違えば結果の加速度が違ってきます。
最後は、摩擦のない斜面の上の箱です。箱にはたらく力は下向きの重さ mg と面が支える垂直抗力だけですが、加速は斜面に沿ってしか起こりません。そこで重さを、面に平行な成分 mg sinθ と、面に垂直な成分 mg cosθ の二つに分けます。垂直な成分は垂直抗力とちょうど打ち消し合って面を押すだけで運動を生まず、平行な成分だけが残って箱をすべらせます。傾斜角 θ を動かして坂を急にするほど sinθ が大きくなり、橙色の加速度の矢印 a = g sinθ が長くなります。θ が 90 度に近づけば、自由落下の加速度 g に近づいていきます。θ が 0 なら sinθ も 0 なので、平らな所ではすべりません。合力を、運動が起こる方向に分けて見ることが要です。