潮汐 軌道共鳴 わかりやすく
月が海の水を引っぱっているのに、なぜ水は月の側だけでなく両側にふくらむのでしょうか。地球全体が同じ力で引かれるのではなく、月に近い側は強く、遠い側は弱く引かれるからです。この力の差、つまり重力の勾配が、地球を月の方向とその反対方向へ同時に引き伸ばし、二つの膨らみをつくります。同じ勾配が長い年月をかけて自転にブレーキをかけると、衛星は一つの面だけを見せたまま固定され、公転周期が整数比をなす共鳴は、複数の衛星の軌道を互いにつなぎとめます。この講は、近づきすぎた衛星が潮汐で引き裂かれて環になる境目、ロッシュ限界で終わります。
重力は距離の二乗に反比例するので、月に近い側は中心より強く、遠い側は中心より弱く引かれます。上の三本の矢印がその差で、金色の中心の矢印にくらべて、近い側の矢印は長く、遠い側の矢印は短くなっています。各点の力から中心の力を引くと、近い側は月のほうへ、遠い側は月と反対のほうへ押される残りの力が残ります。そのため下の物体は二本の橙色の矢印が指す両側へ伸び、膨らみが一つではなく二つできます。距離のスライダーで月を近づけると、この差は 1/r³ に比例して急に大きくなり、楕円が目に見えて細長くなります。
引き伸ばされてできた膨らみは、相手の天体を正確には向いていません。自転が公転より速いと、膨らみは自転に運ばれて少し先へずれ、相手の重力がこのずれた膨らみを引き戻して、自転を遅らせるトルクが生じます。橙色の弧の矢印がそのブレーキです。再生を押すと自転がしだいに遅くなって金色の楕円のずれが小さくなり、やがて自転と公転の速さがそろって、緑の点で示した面がいつも左の惑星を向いたまま止まります。このように一つの面だけを相手に向け続ける状態が潮汐固定で、月がいつも地球に同じ面を見せている理由です。
自転がいつも公転と 1:1 で固定されるとは限りません。軌道が楕円なら別の整数比でも落ち着くことができ、水星は公転二回に対して自転三回、つまり 3:2 で固定されています。下の曲線は比に応じた安定性を谷の形で描いたもので、スライダーで自転と公転の比を動かすと、玉が 1:1 と 3:2 の近くで谷底にぴたりとつかまります。上の軌道図では、印をつけた面が同期自転のときはいつも中心を向き、水星のように固定されたときは回るたびに違う方向を向きます。そのあいだの中途半端な比は潮汐に押しのけられ続け、長くはとどまれません。
衛星どうしも互いに引き合います。となり合う二つの衛星の公転周期が整数比をなすと、二つが同じ方向に並ぶ合が、いつも同じ場所でくり返されます。すると小さな引力が毎回同じ所で積み重なり、軌道をつなぎとめます。木星のイオ、エウロパ、ガニメデが周期 1:2:4 で結ばれたラプラス共鳴が代表例です。図の三つの衛星は実際に回っていて、スライダーで周期比を整数に合わせると、淡い点で記した合の位置が数か所に集まり、下の表示が緑に変わります。整数からずれると、合の位置は円に沿って散らばります。
潮汐力は衛星を引き伸ばそうとし、衛星自身の重力はまとまろうとします。左の青い棒が衛星の自己重力、橙色の棒が潮汐の引き伸ばす力で、衛星が惑星に近づくほど、橙色の棒だけが距離の三乗に反比例して伸びていきます。金色の点線の円が二つが張り合う境目、ロッシュ限界で、おおよそ d ≈ 2.44·R·(ρ惑星/ρ衛星)1/3 です。スライダーで衛星をこの円の内側へ動かすと、引き伸ばす力が自己重力に勝ち、衛星はひとかたまりでいられなくなって、軌道に沿って橙色の破片の環に広がります。土星の環もこうしてできたと考えられています。