定常状態誤差
システム型と入力で誤差が決まる
金色の曲線は追従誤差 e(t) = r(t) − y(t)、すなわち目標入力と閉ループ出力の差だ。点線はその誤差が時間とともに達する定常状態値だ。入力は階段(定数)・ランプ(直線)・放物線(加速)から、システム型は 0形・1形・2形(開ループが原点に持つ極の数)から選ぶ。利得 K は有限な誤差の大きさを決める。システム型が入力より一段以上高ければ誤差が 0 に沈み(完全追従)、ちょうど同じなら 0 でない一定値で止まり(K を上げて減らせるが 0 にはできない)、低ければ誤差が限りなく大きくなる(追従失敗)。1形システム K/(s(s+1)(s+2)) は F1~F6 でずっと使ったまさにそのプラントだ。
最終値定理で誤差を読む
定常状態誤差は最終値定理からきれいに出る。単位フィードバックで誤差のラプラス変換は E(s) = R(s)/(1+L(s)) であり、無限時間後の値は e_ss = lim_{t→∞} e(t) = lim_{s→0} s·E(s) = lim_{s→0} s·R(s)/(1+L(s)) だ。階段入力は R = 1/s、ランプは R = 1/s²、放物線は R = 1/s³ なので、s·R はそれぞれ 1, 1/s, 1/s² になる。すると誤差は s→0 で 1+L(s) がどれだけ大きいかに依り、L(s) が原点に極を持てば s→0 で L が無限大に大きくなって誤差が 0 になる。結局、誤差を 0 に送る力は L が原点に持つ極、すなわち積分器の数だ。
三つの誤差定数とシステム型の表
入力ごとに誤差を左右する量に名を付けたのが誤差定数だ。階段入力には位置誤差定数 K_p = lim_{s→0} L(s)、ランプ入力には速度誤差定数 K_v = lim_{s→0} s·L(s)、放物線入力には加速度誤差定数 K_a = lim_{s→0} s²·L(s) が対応する。すると誤差は階段で 1/(1+K_p)、ランプで 1/K_v、放物線で 1/K_a ときれいに整理される。システム型はこれらの定数が有限か無限かを一度に決める。0形は K_p だけ有限で K_v·K_a は 0 なので、階段に有限誤差、ランプ・放物線に無限誤差だ。1形は K_p が無限(階段誤差 0)、K_v 有限(ランプ有限誤差)、K_a は 0(放物線無限)。2形は K_p·K_v 無限(階段・ランプ誤差 0)、K_a 有限(放物線有限誤差)。この 3 × 3 の表が定常状態誤差のすべてだ。
誤差を減らす二つのつまみ、そして代償
定常状態誤差を減らす道は二つだ。一つはシステム型を上げること、すなわち制御器に積分器を足して原点に極を加えることだ。こうするとその入力の誤差が丸ごと 0 になる。F5 の積分項と F6 の遅れ補償がまさにこれをした。もう一つは利得を上げて誤差定数を大きくすることだが、有限誤差を減らすだけで消せはしない。どちらの道もただではない。原点の極は位相を 90° 遅らせて位相余裕を削り、システムを不安定に近づける(F3·F6 で見たあの位相損失)。利得を上げれば F1~F4 で見たように閉ループが直ちに不安定になる。1形プラント K/(s(s+1)(s+2)) が K=6 で不安定になったあの境界がここでもそのまま生きている。だから実際の設計は定常状態の正確さと安定性・応答速度の綱引きであり、積分器は必要なだけ、進み補償で位相を補いながら足す。
最初の画面に戻ると
追従誤差 e(t) を直に映し出し、入力とシステム型を変えながらその終値を調べた。システム型が入力の次数より高ければ誤差が 0 に消え、同じなら 1/(1+K_p)·1/K_v·1/K_a のような有限値に止まり、低ければ限りなく開いた。そのすべてが最終値定理 e_ss = lim_{s→0} s·R/(1+L) 一つから出て、原点の極の数が 1+L をどれだけ大きくするかが誤差を 0 に送るかを決めた。利得 K は有限誤差の大きさを変えるだけで、次数の壁は越えなかった。F5 の積分項も F6 の遅れ補償も、結局この表でシステム型を一段上げて誤差を消した仕事だった。
これで制御の章の一巡が終わった。ラウスで安定を判定し(F1)、根軌跡で極の道をたどり(F2)、ボード線図の二つの余裕で距離を測り(F3)、ナイキストで −1 を囲むかを見て(F4)、PID で応答を作り(F5)、進み遅れ補償で位相を形作り(F6)、いま定常状態誤差で追従の限界を読んだ(F7)。安定性・応答速度・定常状態の正確さという三つの目標が互いに綱引きしながら一つの設計に束ねられるのが古典制御のすべてだ。ここからさらに進めば、多入出力を一度に扱う状態空間と極を望む所に置く極配置、標本化された信号で制御するディジタル制御、費用を最小化する最適制御が待つ。しかしそのどの道も、この章で見た極・零点・余裕・誤差の言葉の上に建つ。