ゲイン余裕と位相余裕
二つの余裕で不安定までの距離を測る
F1·F2 と同じ開ループ L(s) = K/(s(s+1)(s+2)) のボード線図だ。上はゲイン(dB)、下は位相(度)、横軸は対数周波数だ。上の図でゲインが 0 dB 線を横切る所がゲイン交差周波数で、その周波数で下の位相が −180° 線まで残った角が位相余裕だ。下で位相が −180° を横切る所が位相交差周波数で(このプラントは ω=√2 固定)、その周波数で上のゲインが 0 dB まで残った大きさがゲイン余裕だ。K を上げるとゲイン曲線が上がり二つの余裕が一緒に縮み、K = 6 で両方 0 になり不安定になる。
不安定まで残った距離
単位フィードバックが不安定になる閾値は、開ループ L(jω) が −1 になること、すなわち大きさ 1(0 dB)と位相 −180° が同じ周波数で同時に起きる瞬間だ。そのとき 1 + L = 0 で閉ループ極が虚軸の上に乗る。安定余裕は、今この −1 条件からどれだけ離れているかを二つの方向で測ったものだ。位相余裕は大きさがちょうど 1 になる周波数で位相が −180° までどれだけ残っているか、ゲイン余裕は位相がちょうど −180° になる周波数で大きさが 1 までどれだけ残っているかだ。両方が正なら −1 に触れておらず安定、0 なら境界、負ならすでに −1 を越えて不安定だ。
二つの交差周波数で読む
ボード線図はこの二つをそれぞれ別の周波数で読ませてくれる。ゲイン曲線が 0 dB を過ぎる周波数をゲイン交差周波数と呼ぶ。その周波数で位相曲線を読み、−180° との差を取ると位相余裕 = 180° + ∠L だ。逆に位相曲線が −180° を過ぎる周波数を位相交差周波数と呼ぶ(このプラントは atan ω + atan(ω/2) = 90° で ω = √2 に固定)。その周波数でゲイン曲線を読むとゲイン余裕 = −20 log|L| dB だ。この例では位相交差の大きさが |L| = K/6 なので、ゲイン余裕は 20 log(6/K) dB だ。K が大きくなるほどゲイン曲線が丸ごと上がり、ゲイン交差周波数が右へ移り、そこで位相がより下がっているので位相余裕が縮む。
余裕が語ること
安定余裕は単なる安定・不安定を超えて、実際のシステムがどれだけ信頼できるかを語る。一つ目は頑健性だ。モデルは常に不正確で、部品値は変動し、センサには時間遅れがある。位相余裕は閉ループが不安定になる前に耐えられる追加の位相遅れの量、ゲイン余裕は耐えられる追加ゲインの倍数だ。余裕が薄ければ小さな誤差で崩れる。二つ目は応答の形だ。位相余裕は2次近似で減衰比とほぼ比例し、位相余裕約 45°〜60° が減衰比 0.45〜0.6 の良い過渡応答に対応する。だからボード線図で位相余裕を目標に利得を合わせるのは、D5·F2 で減衰比を合わせたのと同じことを周波数領域で行うことだ。
最初の画面に戻ると
F1·F2 と同じ開ループのボード線図で、不安定まで残った距離を二つの余裕で読んだ。ゲイン曲線が 0 dB を過ぎる周波数で位相が −180° まで残る角が位相余裕、位相が −180° を過ぎる周波数(ω=√2)でゲインが 0 dB まで残る大きさがゲイン余裕だった。K を上げるとゲイン曲線が上がり二つの余裕が一緒に縮み、K = 6 で両方 0 になり不安定になった。この K = 6 は F1 のラウス、F2 の根軌跡の虚軸交差と正確に同じ境界だ。同じシステムの同じ限界を、ラウスは係数で、根軌跡は極の道で、ボード線図は周波数応答の余裕で見たのだ。
安定余裕はボード線図で −1 条件からの距離を二つの方向で測った。しかし −1 は複素平面の一点だから、いっそ L(jω) 自体を複素平面に描いてその点との関係を直接見てはどうか。次のユニットナイキスト線図では、周波数 ω を 0 から無限大まで掃いて L(jω) が描く曲線を描く。その曲線が −1 点を何回囲むかを数えるナイキスト判定法は、開ループがすでに不安定な場合まで含めて閉ループ安定性を完全に判別する。位相余裕とゲイン余裕は、その曲線が −1 にどれだけ近く通るかとしてそこに再び現れる。