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SC · 制御

ゲイン余裕と位相余裕

安定なシステムが不安定までどれだけ余裕があるかは、開ループのボード線図で二つの余裕として読み取ります。位相余裕はゲインが 0 dB になる周波数で位相が −180° まで残している角、ゲイン余裕は位相が −180° になる周波数でゲインが 0 dB まで残している大きさです。この講ではゲイン K を動かし、二つの余裕が 0 へ縮んでシステムが不安定になる過程を確かめます。

二つの余裕で不安定までの距離を測る

F1、F2 ユニットと同じ開ループ L(s) = K/(s(s + 1)(s + 2)) のボード線図です。上はゲイン(dB)、下は位相(度)で、横軸は対数周波数です。上の図で金色の曲線が 0 dB の点線を横切る金色の点がゲイン交差周波数で、その周波数で下の位相曲線が −180° の点線まで残している角、つまり下の図の縦の棒が位相余裕です。下の位相が −180° を横切るところが位相交差周波数で、このプラントでは ω = √2 に固定され、その周波数で上のゲイン曲線が 0 dB まで残している大きさ、つまり上の図の縦の棒がゲイン余裕です。棒は余裕が正なら緑、負なら赤です。最初の K = 8 では二本の棒がどちらも赤く(位相余裕 約 −7.5°、ゲイン余裕 約 −2.5 dB)、K を 6 より下げるとどちらも緑に変わります。

ゲイン (dB), 横軸 対数 ω
位相 (度), 横軸 対数 ω
利得 K8.0
余裕と交差周波数
K = 8.0 · PM = -8° · GM = -2.5 dB
ゲイン交差 ω = 1.63 · 位相交差 ω = 1.41
ゲインが大きすぎて、ゲイン交差周波数が位相交差周波数 √2 を越えてしまいました。位相余裕とゲイン余裕がどちらも負、つまり L(jω) が −1 の点を通り過ぎてしまい、閉ループは不安定です。ボード線図では、位相が −180° の周波数でゲイン曲線が 0 dB より上にあるので、K を 6 より下げなければなりません。
余裕なし (不安定近く)

不安定まで残った距離

単位フィードバックが不安定になる境目は、開ループ L(jω) が −1 になること、つまり大きさ 1(0 dB)と位相 −180° が同じ周波数で同時に起こる瞬間です。そのとき 1 + L = 0 となり、閉ループの極が虚軸の上に乗ります。安定余裕は、今の状態がこの −1 の条件からどれだけ離れているかを二つの方向から測ったものです。位相余裕は大きさがちょうど 1 になる周波数で位相が −180° までどれだけ残っているかを、ゲイン余裕は位相がちょうど −180° になる周波数で大きさが 1 までどれだけ残っているかを測ります。どちらも正なら −1 に届いていないので安定、0 なら境目、負ならすでに −1 を越えて不安定です(このプラントのように開ループが安定なシステムの場合)。

観察位相余裕 = 180° + 位相、読む場所: 0 dB の周波数
位相余裕は 0 dB の周波数で −180° まで残っている角です。
選ぶゲイン余裕を読む場所: ?
ゲイン余裕は −180° の周波数で 0 dB まで残っている大きさです。
空欄安定 ⟺ 二つの余裕がともに ?
二つの余裕がどちらも正なら安定です。
自分で余裕が 0 になるゲイン K = ?
このプラントでは K = 6 で二つの余裕が 0 になります。

二つの交差周波数で読む

ボード線図では、この二つを互いに違う周波数で読み取ります。ゲイン曲線が 0 dB を横切る周波数をゲイン交差周波数といい、そこで位相曲線を読んで −180° との差をとると、位相余裕 = 180° + ∠L です。逆に位相曲線が −180° を横切る周波数が位相交差周波数で、このプラントでは atan ω + atan(ω/2) = 90° から ω = √2 に固定されます。その周波数でゲイン曲線を読むとゲイン余裕 = −20 log|L| dB で、この例では位相交差での大きさが |L| = K/6 なので、ゲイン余裕は 20 log(6/K) dB です。K が大きくなるほどゲイン曲線が丸ごと上へ上がってゲイン交差周波数が右へ移り、そこでは位相がさらに下がっているので位相余裕も縮みます。

余裕からわかること

安定余裕からは、安定か不安定かを分けるだけでなく、実際のシステムをどこまで信頼できるかまでわかります。一つめは頑健性です。モデルはいつも少しずつ不正確で、部品の値は変わり、センサーには時間遅れがあります。位相余裕は閉ループが不安定になるまでに耐えられる追加の位相遅れの量、ゲイン余裕は耐えられる追加のゲインの倍率なので、余裕が薄いと小さな誤差でも崩れます。二つめは応答の形です。二次の近似では位相余裕は減衰比にほぼ比例し、位相余裕 約 45° ~ 60° が減衰比 0.45 ~ 0.6 のよい過渡応答にあたります。実際、F2 ユニットで ζ = 0.5 として選んだ K ≈ 1.04 では、位相余裕は約 52°、ゲイン余裕は約 15 dB です。ですから、ボード線図で位相余裕を目標にゲインを合わせることは、D5、F2 ユニットで減衰比を合わせたことを周波数領域で行うことにほかなりません。

最初の画面に戻ると

最初の画面では、F1、F2 ユニットと同じ開ループのボード線図で、不安定までの距離を二つの余裕として読み取りました。ゲイン曲線が 0 dB を横切る周波数で位相が −180° まで残している角が位相余裕、位相が −180° を横切る周波数(ω = √2)でゲインが 0 dB まで残している大きさがゲイン余裕でした。K を上げるとゲイン曲線が上へ上がって二つの余裕がそろって縮み、K = 6 でどちらも 0 になって不安定になりました。この K = 6 は、F1 ユニットのラウス、F2 ユニットの根軌跡の虚軸との交差とまったく同じ境目です。同じシステムの同じ限界を、ラウスは係数で、根軌跡は極の道筋で、ボード線図は周波数応答の余裕で見たのです。

安定余裕は、開ループ L(jω) が −1(0 dB でありかつ −180°)に届くと不安定になるという事実から出発し、いまその −1 からどれだけ離れているかをボード線図で測ったものです。位相余裕 = 180° + ∠L(ゲイン交差、つまり |L| = 0 dB の周波数で)、ゲイン余裕 = −20 log|L| dB(位相交差、つまり ∠L = −180° の周波数で)で、どちらも正なら安定、0 なら境目、負なら不安定です。位相余裕は耐えられる追加の遅れ、ゲイン余裕は追加のゲインの余地なので頑健性を表し、位相余裕 約 45° ~ 60° が減衰比 0.45 ~ 0.6 のよい過渡応答に対応します(D5、F2 ユニットの設計の周波数領域版)。この例の限界 K = 6 は、F1 ユニットのラウス、F2 ユニットの根軌跡と同じ境目です。
次のユニットへ

安定余裕は、ボード線図の上で −1 の条件までの距離を二つの方向から測りました。けれども −1 は複素平面の一点なので、L(jω) そのものを複素平面に描いて、その点との関係を直接見ることもできます。次のユニット ナイキスト線図 では、周波数 ω を 0 から無限大まで動かしながら L(jω) が描く曲線を描きます。その曲線が −1 の点を何回囲むかを数えるナイキストの判別法は、開ループがすでに不安定な場合まで含めて、閉ループの安定性を漏れなく見分けます。位相余裕とゲイン余裕は、その曲線が −1 のどれだけ近くを通るかとして、そこで再び現れます。