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SC · 信号の基礎

信号の演算

信号を時間軸の上でずらし、伸ばし、裏返す三つの演算が、独立変数 t にどう働くかを身につけます。特に、移動とスケールがいっしょに入った x(at − b) をどの順で読めば図と合うかが、このユニットの要です。

二つのスライダーで目標波形に重ねる

ぼんやりした灰色の曲線が元の信号 x(t) で、t = 0 で立ち上がって指数的に静まる形です。金色の破線が合わせるべき目標で、倍率 a と移動 b を動かすと青い曲線 y(t) = x(at − b) がそれにつれて変わります。青い曲線を目標の上にぴったり重ねると金色に変わり、そのときの a と b を見つけるのがこの画面の課題です。

原信号 x目標
倍率 a1.00
移動 b0.00
現在の変換
y(t) = x(1.00 t)
始まりの位置も幅も目標と違います。a で幅を、b で始まりの位置を合わせますが、始まり b/a は二つのハンドルがいっしょに決めるので、片方だけ動かしてもうまく合いません。
大きくずれ

時間移動は丸ごと左右へ

x(t − t₀) は信号全体を右へ t₀ だけずらします。引き算なのに右へ動くのは、t = t₀ になってはじめて元の t = 0 の値が出てくるからです。つまり信号が遅れて届く遅延で、逆に x(t + t₀) は信号を左へ引き寄せて早く届かせます。

時間スケールは圧縮と伸張

x(at) で a > 1 なら時間が速く流れて信号は圧縮され、0 < a < 1 なら伸び、幅は 1/a 倍になります。時間軸に掛かる量は a なのに、結果の幅はその逆数だという点が要です。このユニットの元の信号は時定数 1/1.4 ≈ 0.71 で静まるので、a = 2 ならその時間は半分の約 0.36 に縮みます。

観察y(t) = x(t − t₀)
t₀ を引くと右へ移動(遅延)。
選ぶy(t) = x(?)
a > 1 なら圧縮、幅は 1/a。
空欄y(t) = x(?)
符号を反転すると左右反転。
自分でy(t) = x(?)
a 倍に圧縮してから t₀ だけ右へずらしたもの。

反転と読む順序

x(−t) は信号を左右に裏返します。移動とスケールがいっしょに来るときは順序に注意が要り、at − b = a(t − b/a) とまとめると、x(at − b) は x(at) のように a 倍に圧縮した信号を b/a だけ右へずらしたものと同じです。b だけ先にずらしてから a 倍に圧縮しても同じ結果になりますが、b/a だけ先にずらしてから圧縮すると始まりが b/a² に行ってしまい、誤りです。図で始まりが b/a、幅が 1/a にぴたりと合ったのもこのためです。

最初の画面に戻ると

目標に重ねるには a と b をいっしょに合わせる必要があり、合った瞬間、青い曲線の始まりは b/a = 1、幅は元の 1/2 になっていました。これが、x(at − b) を a 倍に圧縮してから b/a だけずらした信号として読む、ということの意味です。二本のスライダーは別々に動きましたが、始まりは二つの比 b/a が決め、幅は a だけが決めることが画面にそのまま現れていました。

独立変数に加える演算は、時間軸を逆向きに動かす。時間移動 x(t − t₀) は t₀ > 0 なら右(遅延)へ、t₀ < 0 なら左へずらす。時間スケール x(at) は |a| > 1 なら圧縮、|a| < 1 なら伸長で、幅は 1/|a| 倍になる。反転 x(−t) は左右を裏返す。組み合わせた形 x(at − b) = x(a(t − b/a)) は、a 倍に圧縮してから b/a だけずらすもの、または b だけずらしてから a 倍に圧縮するものとして読む。
次のユニットへ

時間移動と反転は次の章ですぐに使います。畳み込みは、インパルス応答を裏返して(反転)ずらしながら(移動)重なった面積を足していく演算です。時間スケールは標本化や周波数スケーリングで、時間と周波数が互いに逆数で伸び縮みする関係として再び現れます。次のユニット信号の偶·奇分解では、信号を対称性で分け、おまけにその大きさをエネルギーと電力で測ります。