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SC · ラプラス

s 平面と極·零点

s 平面のどこに極があるか、その一点がシステムのふるまいをほぼすべて決めます。極の実部は応答がどれだけ速く収まるかを、虚部はどれだけ速く揺れるかを決めるので、点を一つ見るだけで応答の形を見当づけられます。この講では極を自分で動かし、応答がどう変わるかを確かめます。

極を動かすと応答が変わる

上の図が s 平面で、金色の × 二つが共役な極の対 s = σ ± jω です。緑に塗った左側が安定な左半面、赤に塗った右側が右半面で、両者を分ける縦線が虚軸です。下の図は、この極が生む自然応答 e^(σt)cos(ωt) を t = 0 から 6 まで描いたものです。最初は σ = 0.4 なので極は右半面にあり、応答は揺れながら図の外へふくらんでいきます。二つのスライダーで極を左半面まで動かすと、応答が 0 へ収まっていく様子が見られます。

s 平面 (× = 極)
自然応答 e^(σt)cos(ωt)
実部 σ0.40
虚部 ω2.00
極の位置と応答
s = 0.40 + j2.00
極が虚軸の右にあるので、実部 σ が正です。自然応答 e^(σt)cos(ωt) は揺れながら振幅が e^(σt) に沿って増え続け、やがて図の外へはみ出します。極が一つでも右半面にあるとこのように発散するので、不安定なシステムです。
不安定 (右半面)

極では無限大、零点では 0

伝達関数は二つの多項式の比 H(s) = N(s)/D(s) で書きます。分母 D(s) が 0 になる s では H が無限大へ跳ね上がり、この点を極と呼んで平面に × で記します。分子 N(s) が 0 になる s では H が 0 になり、この点が零点で ○ で記します。自然応答にどのモード(e^(σt)cos(ωt) の形の成分)が含まれるかは極が決め、零点は各モードが応答にどれだけ混ざるか、つまり重みを変えます。上の図には極の対だけがあり、零点は描いていません。

観察極 p = σ + jω
極は分母を 0 にする s です。
選ぶ応答 eσt, σ < 0 → ?
実部 σ が減衰率を決めます。
空欄振動 cos(?t)
虚部 ω が振動の角周波数です。
自分で安定 ⟺ すべての極が ?
安定にはすべての極が左半面にあることが必要です。

実部は減衰、虚部は振動

極 s = σ + jω 一つが生む自然応答は e^(σt)cos(ωt) の形です。実部 σ は指数 e^(σt) の減衰率で、σ が負なら応答は収まり、負に大きいほど速く収まります。虚部 ω はコサインの角周波数なので、極が実軸から上下に離れるほど振動が速くなります。そのため平面上で極の横の位置を読めば応答がどれだけ速く消えるかが、縦の位置を読めばどれだけ速く揺れるかがすぐにわかります。ω のスライダーを 0 まで下げると二つの × が実軸上で重なり、応答は揺れずにそのまま収まるか増え続けます。

左半面なら安定

システムのすべての極が虚軸の左、すなわち実部が負の左半面にあれば、自然応答のすべてのモードが収まり BIBO 安定です。極が一つでも右半面にあれば、そのモードが発散して不安定になります。虚軸上の極は消えない振動を残す臨界安定ですが、同じ周波数の有界な入力に共振して出力が限りなく大きくなるので、BIBO 安定には入りません。この基準は B4 で見た a < 0 の安定条件を複素極まで広げ、s 平面上の位置一つにまとめたものです。安定性を決めるのは極であり、零点は応答の形を変えるだけで安定性は変えられません。

最初の画面に戻ると

最初の画面で極を虚軸の左へ引き寄せると応答は 0 へ収まり(安定)、右へ押すと振幅がふくらんで図の外へはみ出し(不安定)、虚軸の上に置くと同じ大きさで揺れ続けました(臨界)。ω を上げて極を実軸から上下に遠ざけるほど、振動も速くなりました。極の横の位置である実部が減衰率、縦の位置である虚部が振動の角周波数だったわけです。システムがどう動くかは、s 平面上の点一つの位置にすでに書かれていました。

伝達関数 H(s) = N(s)/D(s) で、極は D(s) = 0 となる点(H→∞、× で表示)、零点は N(s) = 0 となる点(H = 0、○ で表示)です。極 s = σ ± jω が生む自然応答は eσtcos(ωt) で、実部 σ は減衰率(σ < 0 なら収まる)、虚部 ω は振動の角周波数です。すべての極が左半面(Re < 0)にあれば BIBO 安定、一つでも右半面にあれば不安定、虚軸上にあれば臨界安定です(B4 の a < 0 を複素極へ広げたもの)。零点は各モードの重みを変えますが、安定性は変えられません。
次のユニットへ

極と零点がシステムの性質をほぼすべて決めるなら、両方をまとめて持つ関数 H(s) はそのシステムの身分証のようなものです。次のユニット 伝達関数 では、システムの微分方程式をラプラス変換して H(s) = 出力/入力 を立て、入力の変換に H(s) を掛けて出力を求めます。時間領域の畳み込みが s 領域で掛け算になるのは、C4 で見た性質そのままです。極と零点は、その H(s) の分母と分子を因数分解したときに現れる根です。