根軌跡
K を上げ極を目標減衰線に乗せる
F1 ユニットと同じプラント K/(s(s + 1)(s + 2)) です。上の図の灰色の三つの点(0、−1、−2)が開ループの極、つまり K = 0 のときの出発点で、青い線が閉ループの極が描く根軌跡、金色の × が現在のゲイン K での三つの極です。オレンジの点線は減衰比 ζ = 0.5 の線で、負の実軸と 60° をなします。最初の K = 0.3 では三つの極がすべて実軸上にある過減衰で、K を上げると 0 と −1 から出発した二つの極が約 −0.42 の分岐点(K ≈ 0.385)で出会い、そのあと複素共役の対に分かれて上下へ反り上がります。その複素極は K ≈ 1.04 でオレンジの線の上に乗り、さらに上げると K = 6 で虚軸を越えて不安定になります。
極が描く道
単位フィードバック系の閉ループの極は 1 + K·G(s) = 0 の根で、ここで G(s) = N(s)/D(s) は開ループ伝達関数です。式を整理すると D(s) + K·N(s) = 0 なので、ゲイン K が変わるたびに根も変わります。K = 0 なら D(s) = 0 なので閉ループの極は開ループの極から出発し、K が無限大に向かうと N(s) = 0 が支配して極は開ループの零点に集まります。零点が足りなければ、残った枝は無限遠へ伸びていきます。こうして K を 0 から無限大まで動かしたときに根が描く軌跡全体が根軌跡です。
道の読み方
根軌跡は、いくつかの規則さえ知っていれば手でもスケッチできます。実軸上では、その点より右にある開ループの極と零点の個数が奇数の区間にだけ軌跡があり、この例では 0 と −1 の間、そして −2 の左がそうです。0 と −1 から出発した二本の枝は互いに近づき、分岐点(約 −0.42)で出会って実軸を離れ、複素共役の対になります。零点がないので三本の枝はすべて無限遠へ向かい、その方向は実軸上の −1 から伸びて実軸と ±60°、180° をなす漸近線です。ある K で複素の枝が虚軸を横切れば、そこから先は不安定で、その交差ゲインと周波数は F1 ユニットでラウスによって求めた K = 6、s = ±j√2 とちょうど同じです。根軌跡とラウスが同じ境目を指しているわけです。
極を配置して応答を設計する
根軌跡の本当の使い道は設計です。D5 ユニットで見たように、二次系の過渡応答は支配的な極の位置、つまり減衰比 ζ と固有角周波数 ωn が決めます。s 平面で原点を通る一本の直線は一定の ζ を表し、その直線が負の実軸となす角のコサインが ζ です。そのため望みの ζ の直線を引いて、それが根軌跡と交わる点を探せば、その点を作るゲイン K がそのまま設計値になり、最初の画面でしたのがまさにこれです。ただしこのシステムでは三つめの極もいっしょに動くので、支配的な複素極が応答を主導するには三つめの極が十分に左にあることもあわせて確かめます(K ≈ 1.04 では三つめの極 −2.33 は複素極の実部 −0.33 のおよそ 7 倍左)。比例ゲインだけで足りなければ、あとで出てくる補償器が軌跡そのものを望みの形に曲げます。
最初の画面に戻ると
最初の画面では、F1 ユニットと同じプラントの閉ループの極が、ゲイン K が大きくなる間に s 平面に描く道をたどりました。K が小さいときは極が実軸上に散らばった過減衰で、K を上げると二つの極が分岐点で出会い、複素共役の対に分かれて上下へ反り上がりました。その複素極をオレンジの ζ = 0.5 の線の上に乗せると、速さと行き過ぎがつり合う設計ゲインが得られました。さらに上げると極は K = 6 で虚軸を越えて不安定になり、それはまさに F1 ユニットでラウスによって求めた境目でした。ラウスが安定の境目の一点を数値で示したとすれば、根軌跡はゲインが描く道全体を広げ、安定だけでなく応答の形まで設計できるようにしました。
根軌跡は、s 平面で極を直接配置する設計の道具でした。ところが実際のシステムでは正確な伝達関数がわからないことが多く、代わりにいろいろな周波数のサイン波を入れて周波数応答を測ります。次のユニット ゲイン余裕と位相余裕 では、同じプラントの開ループのボード線図の上で、安定なシステムが不安定までどれだけ余裕があるかを二つの余裕として読み取ります。位相が −180° になる周波数 √2 rad/s で、ゲインが 0 dB まで残している大きさがゲイン余裕で、K = 6 でその余裕が 0 になるので、根軌跡が虚軸を越えるまさにその点と同じです。根軌跡が極の位置で見た境目が、ボード線図では周波数軸の上にもう一度現れます。