根軌跡
K を上げ極を目標減衰線に乗せる
F1 と同じプラント K/(s(s+1)(s+2)) だ。青い曲線が閉ループ極の描く根軌跡で、金色の × が今の利得 K での極だ。橙の破線は目標減衰比 ζ = 0.5 の線だ。K が小さいと極は実軸上に散らばった過減衰だ。K を上げると二つの極が実軸で出会って分かれ(分岐点)、複素の対として上下に曲がり上がる。その複素極を橙の ζ = 0.5 線の上に正確に乗せてみよ。さらに上げると K = 6 で極が虚軸を越え不安定になる。
極が描く道
単位フィードバックシステムの閉ループ極は 1 + K·G(s) = 0 の根だ。ここで G(s) = N(s)/D(s) は開ループ伝達関数だ。式を整理すると D(s) + K·N(s) = 0 で、利得 K が変わるたびに根が変わる。K = 0 なら D(s) = 0、すなわち閉ループ極が開ループ極から出発する。K が無限大へ行くと N(s) = 0 が支配し、極が開ループ零点へ集まる。零点が足りなければ残りの枝は無限大へ伸びる。こうして K を 0 から無限大まで掃くとき根が描く軌跡全体が根軌跡だ。
道の読み方
根軌跡はいくつかの規則で手でもスケッチできる。実軸の上では、その点の右にある開ループ極と零点の数が奇数の区間だけに軌跡がある。この例では 0 と −1 の間、そして −2 の左だ。0 と −1 から出発した二つの枝は互いに近づき、分岐点で出会って実軸を離れ、複素の対になる。零点がないので三つの枝はすべて無限大へ向かい、その方向は実軸と ±60°、180° をなす漸近線だ。そしてある利得で複素の枝が虚軸を横切ると、そこから不安定だ。その交差の利得と周波数は F1 のラウスで正確に K = 6、s = ±j√2 だった。根軌跡とラウスが同じ境界を指す。
極を配置して応答を設計する
根軌跡の真の使い道は設計だ。D5 で見たように、2次系の過渡応答は支配的な極の位置、すなわち減衰比 ζ と固有振動数 ωn が定める。s 平面で原点を通る一本の直線は一定の ζ を意味する(実軸となす角のコサインが ζ)。だから望む ζ の直線を引き、その直線が根軌跡と交わる点を見つければ、その点を作る利得 K がすなわち設計値だ。最初の画面でやったことがまさにこれだ。ただし見えない第三の極も一緒に動くので、支配的な複素極が応答を主導するには第三の極が十分に左にあることも合わせて確認する。比例利得だけで足りなければ、後に出る補償器が軌跡そのものを望む形に曲げる。
最初の画面に戻ると
F1 と同じプラントの閉ループ極が、利得 K が大きくなる間に s 平面に描く道を辿った。K が小さいときは極が実軸に散らばった過減衰で、K を上げると二つの極が分岐点で出会い複素の対に分かれ上下に曲がり上がった。その複素極を橙の ζ = 0.5 線に乗せると、速さと行き過ぎが釣り合った設計利得が出た。さらに上げると極が K = 6 で虚軸を越え不安定になった。まさに F1 でラウスで求めた境界だ。ラウスが安定の境界の一点を数で与えたなら、根軌跡は利得が描く道全体を見せ、安定だけでなく応答の形まで設計させた。
根軌跡は s 平面で極を直接配置する時間領域の設計道具だ。しかし実際のシステムは正確な伝達関数が分からないことが多く、代わりに様々な周波数の正弦波を入れて応答を測る。次のユニットボード線図では、周波数に対する利得と位相を、対数軸の上に直線の和として描く。極と零点の一つ一つが折れ線の一節として現れ、複雑な伝達関数の周波数応答を手でスケッチし、また測定データから逆に読み取れる。根軌跡が極の位置で応答を見たなら、ボード線図は周波数で同じシステムを見る。