seegongsik
SC · 制御

ナイキスト線図

安定性を、−1 という一点との関係として見ます。開ループ L(jω) を周波数 ω に沿って複素平面に打つと一本の曲線になり、その曲線が −1 の点を何回囲むかを数えれば、閉ループの右半面の極の数がわかります。この講ではゲイン K を動かし、曲線が −1 の右を通っていたのが −1 を越えて左から囲むようになる過程を確かめます。

曲線が −1 を囲むか見る

F1、F2、F3 ユニットと同じ開ループ L(jω) = K/(jω(jω + 1)(jω + 2)) を複素平面に描いたナイキスト線図です。濃い金色の曲線は ω を 0.3 から 30 まで大きくしたときに L(jω) が通る位置、薄い金色の曲線は負の周波数にあたる鏡像で、赤い × が −1 の点です。曲線は、位相が −180° になる ω = √2 で負の実軸を −K/6 で横切ります。最初の K = 8 ではその交点が −1.33 と −1 の左にあるので、曲線は −1 を囲みます。ゲイン K を下げると曲線が丸ごと小さくなって交点が右へ退き、K < 6 なら −1 を囲まずに安定、K = 6 ならちょうど −1 を通る臨界、K > 6 なら再び囲んで不安定になります。

複素平面 (× = −1, 曲線 = L(jω))
利得 K8.0
−1 との関係
K = 8.0 · 交差点 = -1.33 · GM = 0.75×
N = 2 · Z = 2 (P = 0)
曲線が負の実軸を −1 の左(−K/6 < −1)で横切り、−1 の点を囲んでいます。原点を回り込む部分が作る大きな半円まで含めた曲線全体は −1 を時計回りに二回囲み、ナイキストの判別ではこの二回が閉ループの右半面の極二つとして数えられます。F1 ユニットのラウスの符号変化二回、F2 ユニットで虚軸を越えた複素共役の極の対と同じ不安定です。
不安定 (−1 を囲む)

ループを複素平面に描く

ボード線図は、開ループ L(jω) の大きさと位相を周波数に沿って別々に描きました。ナイキスト線図はその二つを一枚の図にまとめます。周波数 ω ごとに L(jω) は大きさと位相をもつ一つの複素数なので、それを複素平面の一点として打ち、ω を 0 から無限大まで(そして対称に負の ω まで)動かすと、点が一本の曲線を描きます。ボード線図で位相が −180° でありかつ大きさが 1 になる瞬間が、ここでは曲線がちょうど −1 の点に触れる瞬間です。そのため安定に関するすべての問いが、−1 という一点と曲線の関係に集まります。

観察ナイキスト線図 = L(jω) を描く場所: 複素平面
L(jω) を複素平面の点として打ち、曲線を描きます。
選ぶZ = N + P : 囲む回数を数える点: ?
Z = N + P、−1 を囲む回数を数えます。
空欄開ループが安定のとき: 安定 ⟺ 囲む回数 = ?
開ループが安定なら、−1 を囲まないことが安定の条件です。
自分で曲線が −1 を通るゲイン K = ?
曲線が −1 を通るゲインは K = 6 です。

−1 を囲む回数を数える

ナイキストの判別法は Z = N + P という一つの式にまとめられます。Z は閉ループの右半面の極の数(0 であってほしい値)、P は開ループの右半面の極の数、N は L(jω) の曲線が −1 の点を時計回りに囲む回数です。閉ループの極は 1 + L(s) = 0 の根で、L の曲線が −1 を囲むことは 1 + L の曲線が原点を囲むことと同じなので、偏角の原理でその内側の根の数を数えられます。開ループが安定なら(P = 0)安定の条件は N = 0、つまり −1 を一度も囲まないことで、この例がそうです。K < 6 なら曲線は −1 の右を通って囲まないので安定、K > 6 なら −1 を二回囲んで Z = 2、右半面の極二つで不安定です。

ナイキストがより遠くを見る所

ナイキストの判別法の力は、P が 0 でない場合、つまり開ループがすでに不安定なシステムで発揮されます。そのようなシステムではボード線図の余裕だけでは安定性を正しく判定できませんが、ナイキストの判別法は Z = N + P で正確に答えます。開ループに右半面の極が一つあるとき(P = 1)、閉ループが安定(Z = 0)であるには曲線が −1 を反時計回りにちょうど一回囲む必要があり(N = −1)、D4 ユニットの不安定なプラントにゲイン k をかけた L = k/(s − 1) がまさにそれです。その曲線は −k と 0 を直径の両端とする円なので、k > 1 のとき −1 を反時計回りに一回囲み、だから k > 1 で閉ループが安定になります。安定余裕もここで再び現れ、位相余裕は曲線が単位円と交わる点から負の実軸までの角、ゲイン余裕は曲線が負の実軸と交わる点から −1 までの距離を倍率で表したものです。曲線が −1 のどれだけ近くをかすめるかを見れば、頑健さをひと目で見積もれます。

最初の画面に戻ると

最初の画面では、F1、F2、F3 ユニットと同じ開ループ L(jω) を複素平面に描き、安定性を −1 の点との関係一つで見ました。曲線は負の実軸を −K/6 で横切りました。K が 6 より小さいときはその交点が −1 の右なので曲線は −1 を囲まずに安定で、K = 6 ではちょうど −1 を通る臨界、K が 6 より大きいときは交点が −1 の左へ越えて −1 を二回囲み、右半面の極二つで不安定でした。ラウスは係数で、根軌跡は極の道筋で、ボード線図は周波数の余裕で、ナイキストの判別法は −1 を囲む回数で、同じシステムの同じ境目 K = 6 を指していたわけです。そのうち開ループがすでに不安定な場合にまで答えられるのは、ナイキストの判別法だけです。

ナイキスト線図は、開ループ L(jω) を周波数 ω に沿って複素平面に描いた曲線です。ナイキストの判別: Z = N + P(Z = 閉ループの右半面の極の数、P = 開ループの右半面の極の数、N = 曲線が −1 を時計回りに囲む回数)。閉ループの極は 1 + L = 0 の根なので、−1 を囲む = 1 + L が原点を囲むです(偏角の原理)。開ループが安定(P = 0)なら、−1 を囲まない(N = 0)ことが安定の条件です。たとえば L = K/(s(s + 1)(s + 2)) は負の実軸を −K/6 で横切り、K < 6 なら −1 の右(安定)、K = 6 なら −1 を通過(臨界、ゲイン余裕 0 dB)、K > 6 なら −1 を二回囲みます(右半面の極 2 個、不安定)。F1、F2、F3 ユニットと同じ境目 K = 6 を、ナイキストの判別法は P ≠ 0 の場合まで広げます。
次のユニットへ

ここまで、ラウス、根軌跡、ボード線図、ナイキスト線図で、与えられたループが安定かどうか、またどれだけ頑健かを解析してきました。どれもゲイン K 一つだけを調整する比例制御でした。ところが比例ゲイン一つでは、プラントに積分器がない限りステップ入力の定常偏差を 0 にできず、過渡応答を思いどおりに形づくることもできません。次のユニット PID 制御 では、制御器そのものに動特性を加えます。積分項は偏差が残っている限り積み上がり続けて定常偏差を消し、微分項は変化を先読みして減衰を加えます。比例・積分・微分の三つの項のゲインを調整し、これまで見てきた極と余裕を望みの位置に直接形づくる設計へ入っていきます。