ラプラス変換
重み付き信号は収まるか
上の図の薄い破線は増えていく信号 e^(at)(a = 1)で、青い曲線はそこに収束因子 e^(−σt) を掛けた重み付き信号です。下の図はその重み付き信号を 0 から積み上げた累積積分です。σ を大きくして、増えていた信号が 0 へ静まり、積分が天井に届いて止まれば、そのときラプラス変換が存在します。
フーリエに収束因子を掛ける
フーリエ変換は信号に e^(−jωt) を掛けて積分し、ラプラス変換はそこに実数の指数 e^(−σt) をもう一枚掛けます。二つの因子を合わせると e^(−st) で、ここで s = σ + jω が複素周波数です。jω の部分は相変わらず振動を選び出しますが、σ > 0 なら e^(−σt) は時間とともに小さくなるので、σ の部分が信号を無理やり静めます。だから限りなく増えてフーリエ積分が発散していた信号も、σ を十分大きくすれば積分が収束して変換をもちます。
収束領域(ROC)
ラプラス積分はすべての σ で収束するわけではありません。増えていく信号 e^(at)u(t) なら重み付き信号は e^((a−σ)t) なので、σ > a のときだけ 0 へ静まって積分が収束し、このように積分が収束する σ の範囲を収束領域、つまり ROC と呼びます。この信号の変換は X(s) = 1/(s − a) で、ROC は Re(s) > a です。同じ式でも ROC が違えば別の信号を表すので、ラプラス変換は X(s) と ROC が一組になってはじめて完全です。
フーリエはラプラスの一断面
s = σ + jω は平面の上の点です。σ を 0 にすると s = jω、つまり縦の虚軸で、そこではラプラス変換はちょうどフーリエ変換になりますが、それはその虚軸が ROC の中にあるときだけです。だからフーリエは、ラプラスが見る s 平面全体のうち、虚軸の一本を切り出した断面です。σ を自由に選べるおかげでラプラスは過渡応答と安定性を扱え、次のユニットではこの s 平面の上に極と零点を打ってシステムを読みます。
最初の画面に戻ると
σ が小さいときは重み付き信号がまだ増え、積分は発散しましたが、まさにそこがフーリエ変換の失敗する所です。σ を成長率 a の先まで大きくすると e^((a−σ)t) は 0 へ静まり、積分が天井 1/(σ − a) に落ち着いて、ラプラス変換が存在し始めました。ラプラスがフーリエに加えたのは、まさにこの選べる σ、つまり収束を強いる実数の指数です。その σ がつくる収束の範囲が ROC で、変換は X(s) と ROC の一組です。
s が平面の上の点なら、変換 X(s) が無限大になる点と 0 になる点に、そのシステムの性格がほとんど収まっています。次のユニットs 平面と極·零点では、X(s) = 1/(s − a) の分母を 0 にする極 s = a を平面に打ちます。極が虚軸の左(Re < 0)にあれば静まる応答、右にあれば発散する応答で、B4 で見た a < 0 の安定条件が、まさにこの極の位置として再び現れます。平面の上のいくつかの点でシステムを読む方法が、そこで開けます。