ブロック線図とフィードバック
フィードバックで不安定を安定に
上の図は負のフィードバックループです。入力 X が加え合わせ点(+)に入り、前向き経路のプラント H(s) = 1/(s − 1) を通った出力 Y は、ゲイン k のフィードバック経路を経て加え合わせ点で引かれます(−)。このプラントは極が右半面の +1 にあるので、そのままでは発散します。下の図は閉ループのインパルス応答 e^((1 − k)t) で、k は 0.4 から始まります。ゲイン k を上げて閉ループの極 s = 1 − k を虚軸の左へ越えさせると、増えていた応答が 0 へ収まっていくのが見られます。
箱をつなぐ代数
ブロック線図は、システムを伝達関数を書いた箱で表し、信号の流れる向きを矢印でつなぎます。二つのシステムを直列につなぐと一つめの出力が二つめの入力になるので、全体の伝達関数は二つの伝達関数の積 H₁H₂ です。同じ入力を二つのシステムに分けて入れ、出力を足し合わせる並列なら、全体は和 H₁ + H₂ になります。どれほど込み入った信号の流れでも、この掛け算と足し算の規則を順に当てはめていけば、伝達関数一つにまとめられます。
フィードバックがループを閉じる
フィードバックは、出力を戻して入力から引く構造です。前向き経路 H に入る信号は、もとの入力 X からフィードバック経路 G を通った出力 GY を引いたものなので、Y = H(X − GY) です。これを整理すると Y(1 + HG) = HX、つまり閉ループ伝達関数 T = Y/X = H/(1 + HG) が得られます。分母の 1 + HG が、フィードバックによって新しく生まれた部分です。負のフィードバックでは、出力が行き過ぎると前向き経路に入る信号が減り、足りないと増えるので、出力は目標を追うようにおのずと調整されます。最初の画面の図では、フィードバック経路 G は定数 k です。
フィードバックが極を移す
閉ループの極は分母 1 + HG = 0 の根です。この式は開ループ H の極を決めていた式とは違うので、フィードバックをかけると極は新しい位置へ移ります。最初の画面の不安定なプラント H = 1/(s − 1) にゲイン k の負のフィードバックをかけると、閉ループは 1/(s − 1 + k) となり、極は s = 1 − k へ移ります。したがって k を 1 より大きくすると極は左半面へ越え、システムは安定になります。このようにゲインで極の位置を決めることが制御の要であり、ゲインを変えたときに極が描く道筋をたどる方法が、あとで出てくる根軌跡です。
最初の画面に戻ると
プラント H = 1/(s − 1) は極が右半面にあるので、単独では発散しました。フィードバックループを閉じてゲイン k を上げると、閉ループの極 s = 1 − k が虚軸を越えて左半面へ移り、増えていた応答は 0 へ収まりました。フィードバックは箱をもう一つつないだだけではなく、分母を 1 + HG に変えて極を新しい位置へ動かしたのです。ゲイン一つで極を配置し、不安定を安定に変えること、それがフィードバック制御の要です。
フィードバックで極を望みの位置に置けるなら、設計を仕上げるには、その極の位置がどんな応答を生むかを正確に知る必要があります。次のユニットでは、標準形の一次系と二次系の応答を見ていきます。一次系は時定数 τ 一つで決まる単純な減衰で、二次系は減衰比 ζ と固有角周波数 ωn が過渡応答を決めるため、オーバーシュートや整定時間といった実務上の仕様を極の位置から直接読み取れます。フィードバックで動かした極がどんな応答を生むのかが、そこではっきりします。