対称分: 不平衡を三つの平衡集合に分ける
I_a を引いて三つの成分を読む
左の三つの電流のうち I_b と I_c は平衡の位置に固定されていて、先端を引けるのは I_a だけです。右の三本の棒は上から正相分 I_1、逆相分 I_2、零相分 I_0 の大きさです。I_a の先端が単位円と横軸の交わる右の点にあれば平衡で、正相分だけが残り逆相分と零相分は 0 になります。この図では I_a だけが動くので、平衡を外れた瞬間から下の二本の棒はいつも同じ長さで一緒に伸びます。零相分は A5 で見た三つの電流の和の 1/3 です。
三つの平衡集合の和
対称座標法の定理によれば、三つのフェーザがどんな形でも、三つの平衡集合の和としてただ一通りに書けます。正相分は相順が元の系統と同じ平衡三相(a-b-c)、逆相分は相順が逆の平衡三相(a-c-b)、零相分は三つのフェーザの大きさと位相がすべて等しい同相の集合です。そのため I_a = I_1 + I_2 + I_0 となり、I_b と I_c も同じ三つの成分を演算子 a(1∠120°)で回して足したものです。
なぜ分けると楽になるのか
平衡した系統では、正相·逆相·零相の回路は互いに干渉せず、きれいに分かれます。そこで発電機や線路ごとに正相·逆相·零相のインピーダンスを別々に決めておき、不平衡故障はこの三つの回路を故障の種類に合わせてつないで解きます。難しい不平衡の問題一つが、なじみのある平衡の問題三つに分かれるわけです。ふだんの運転では正相分だけが流れ、逆相分は発電機の回転子を過熱させ、零相分は保護継電器が地絡を見つけるための信号になります。
零相分 · A5 の中性線電流
零相分 I_0 = (I_a + I_b + I_c)/3 は、A5 で見た中性線電流のちょうど 1/3 です。三つの零相電流は大きさも位相も同じなので打ち消し合わず、そのまま足されて中性線や大地へ流れます。そのためには中性点接地のような帰り道が必要で、中性点を接地していない Y 結線や Δ 結線の線路には零相電流は流れません(Δ 結線の内部では輪を回ることはできます)。平衡のときは 0 だったこの零相分が、一つの相が大地に触れる地絡故障で跳ね上がり、保護の手がかりになります。
最初の画面に戻ると
最初の画面で I_a を平衡の位置に置くと、逆相と零相の棒は 0 まで縮んで正相分だけが残り、引き離すほど二本の棒が同じ長さで一緒に伸びました。不平衡とは結局、正相分の上に逆相分と零相分がどれだけ乗っているかという問題です。そのうち零相分は A5 で中性線へ流れ出ていた電流を三相に等しく分けた量で、不平衡な三相をこうして三つの平衡集合に分けておけば、次のユニットではあらゆる故障をなじみのある平衡回路のつなぎ方として解けます。
三つのシーケンス回路を手にしたので、次のユニット(PW-D3)では故障の種類と故障電流を扱います。三相短絡は正相回路一つで、一つの線が大地に触れる地絡は正相·逆相·零相の回路を直列に、線間短絡は正相と逆相の回路を並列につないで解きます。故障ごとに変わるのは三つの回路のつなぎ方だけなので、たいてい最も大きな電流を流す三相短絡にも、零相分となって現れる最も多い地絡故障にも、同じ道具が使えます。