太陽光·風力の系統連系: インバータに慣性はない
再エネ比率を引いて周波数を読む
曲線は、発電機が一台脱落した直後に系統周波数が時間とともにどう変わるかを表します。下のバーのハンドルを引いて再エネ比率を上げると、同期機が減って系統の慣性が小さくなり、同じ大きさの事故なのに周波数がより急に下がり、最低点がより深くなります。最低点が緑の破線、つまり周波数低下による負荷遮断のしきい値 59.43 Hz を下回ると、曲線が赤に変わって負荷遮断が働きます。この図では、再エネ比率がおよそ 46% を超えるとそうなります。
インバータが間に入る
同期発電機は系統に直接つながっていて、回転子が系統周波数と一体になって回ります。しかし太陽光は直流を出し、風力発電機の多くは風によって周波数が変わる交流を出すので、そのままでは 60 Hz の系統につなげません。そこでインバータという電力変換装置が間に入り、その出力を系統の周波数 · 電圧 · 位相に合わせてつくり直して送り込みます。インバータは系統を測りながら同期を合わせる賢い装置ですが、エネルギー源と系統を切り離すまさにその性質のせいで、慣性が消えてしまいます。
慣性が周波数を支える
系統周波数は、発電と負荷のつり合いを示す針です。発電が急に足りなくなると周波数が下がり、その最初の下がる速さ RoCoF = ΔP/2H は系統の慣性定数 H に反比例します。同期発電機の重く回る回転子は ½Jω² の運動エネルギーを蓄えていて、事故の瞬間にそのエネルギーを自然に放出し、周波数がゆっくり下がるように支えます。インバータはエネルギー源(太陽 · 風 · 蓄電池)を系統周波数から電子的に切り離すので、別の制御を加えない限り、このような慣性を出しません。
慣性が減ると何が問題か
再エネ比率が高まって同期機を押しのけるほど系統の慣性が減り、同じ発電脱落でも周波数がより速く(RoCoF↑)、より深く(最低点↓)下がります。図で比率を 0% から 90% に上げると、慣性定数 H は 5.6 秒から 1.1 秒に減り、RoCoF は 0.32 から 1.64 Hz/s へ約五倍になり、最低点は 59.53 Hz から 59.13 Hz に下がります。下がりすぎると周波数低下による負荷遮断がわざと負荷を切って崩壊を防がなければならず、それでも足りなければ広域停電に広がります。対策は、インバータに疑似慣性(仮想慣性)制御を入れて慣性をまねさせ、蓄電池の速い周波数応答を加え、同期調相機を系統に置くことです。再エネへの転換の中心となる工学的課題が、まさにこの慣性不足です。
最初の画面に戻ると
事故の大きさは同じだったのに、再エネ比率を上げるほど周波数の曲線はより急に下がって最低点が深くなり、半分近くでは曲線が緑の破線を下回って赤に変わりました。変わったのは事故ではなく、その衝撃を受け止める回転慣性の量でした。インバータは系統に賢く同期しますが、同期機のような重い回転子をもたないので、周波数を支える慣性を出せません。再エネへの移行はきれいなエネルギーを得る代わりに、この慣性をどう取り戻すかという宿題を残し、その宿題が次のユニットの安定度の話へつながります。
慣性と周波数の話を始めたので、最後のユニット(PW-E2)で系統の安定度と周波数をひとまとめにします。需給のつり合いが周波数を決め、事故が起きると、まず慣性が下降を遅らせ、次にガバナが下降を止め、自動発電制御が周波数を 60 Hz に戻します。この図で曲線が 60 Hz まで戻らず少し下にとどまったのも、ガバナだけが働いたからです。さらに D1 で見た電力相差角曲線の上で、事故で広がった位相角が等面積の条件を超えると発電機が同期を失う過渡安定度まで扱い、これまでの断片が安定という一枚の絵にまとまります。