同期電動機の負荷角と力率調整
過励磁で励磁を大きくすると力率は
負荷(軸にかける有効電力)が決まると電機子電流の有効分は固定だ。だが界磁励磁で内部起電力 E の大きさを変えると電流の無効分が変わる。励磁スライダーを動かしてペーザで電流 I が端子電圧 V より遅れるか進むかを見よう。励磁を大きくすると(過励磁)力率はどこへ向かうか。
回転子が回転磁界に噛み合って引かれる
同期電動機は固定子の回転磁界と直流で励磁された回転子(磁石)が磁気的に噛み合い、ともに同期速度で回る。誘導機と違ってすべりがない。負荷がかかると回転子が回転磁界より負荷角 δ だけ後ろに下がるが速度はそのまま。トルクはこの角で定まり T ∝ (V E / Xs) sin δ。負荷が増えると δ が増えてトルクも増えるが、δ が 90° を越えると磁気的な噛み合いが外れ同期を失う(脱調)。だから同期電動機は自力で始動できず別の始動手段が要る。
励磁で無効電力を売買する
負荷が決まると電動機が吸収する有効電力が決まり、それは電機子電流のうち端子電圧と同相の有効分に対応する。この有効分は励磁を変えてもそのまま。だが界磁励磁で内部起電力 E の大きさを変えると電流の無効分が変わる。不足励磁(E が小)なら電動機が系統から遅れ電流を引き無効電力を吸収し、過励磁(E が大)なら進み電流を流して無効電力を供給する。励磁がちょうど合う一点で無効分が0になり力率1、電機子電流が最小になる。有効電力は負荷角が、無効電力は励磁が別々に握る。
同期調相機で力率を直す
この性質をそのまま使ったのが同期調相機だ。軸にほとんど負荷をかけずに回る同期電動機を過励磁で運転すると、系統に進み無効電力を供給し力率を改善する。まるで巨大なコンデンサのように働くわけだ。逆に不足励磁で運転すると遅れ無効電力を吸収し、軽負荷時に長距離送電線が起こす過電圧を抑える。普通の負荷電動機も過励磁で回せば同じことをするので、工場で同期電動機は動力を出しながら工場全体の力率まで改善する一石二鳥の機械になる。
最初の画面に戻ると
励磁を大きくすると力率が進みへ移った。負荷が定めた有効電力は電機子電流の有効分に固定されトルクを変えなかったが、界磁励磁が内部起電力 E の大きさを変え電流の無効分を動かしたからだ。不足励磁なら遅れで無効電力を吸収し、過励磁なら進みで供給し、ちょうど合えば力率1で電機子電流が最小だ。トルクは負荷角が、力率は励磁が別々に握るこの分離が同期電動機の特別さだ。無負荷で過励磁して回せばそのまま力率を直す同期調相機になる。発電機で見た E = V + jIXs が電動機ではトルクと力率を一度に扱う取っ手として戻ってくる。
励磁で力率を動かすという事実を一枚の図に描くと、横軸の界磁電流に対し縦軸の電機子電流が描くV字曲線になる。谷が力率1、左が不足励磁(遅れ)、右が過励磁(進み)だ。負荷が増えるほど曲線全体が上へ上がる。次のユニットはこのV曲線で力率調整を定量化し、負荷角がどこまで耐えるか安定度(脱調限界)を一緒に見る(MC-D4)。