三相電流と回転磁界
三つの脈動磁束を足すと何になるか
空間的に 120° 離れた三つの巻線に、時間的に 120° ずれた三相電流が流れ、それぞれの巻線は自分の軸に沿って磁束を振動させるだけです。スライダーで位相 ωt を動かすと、色の三つのベクトルが伸び縮みしながら金色の合成ベクトルが動きますが、その合成ベクトルの大きさと向きがどう変わるのか、それがこの課の問いです。
単相は脈動するだけ
単相巻線に交流が流れると、磁束は一つの軸に沿って最大値から 0、さらに反対側の最大値へと振動するだけで回りません。これを交番磁界といい、交番磁界は同じ大きさで互いに逆向きに回る二つの回転磁界の和に分けられます。そのため単相誘導電動機は止まっているとき、どちらへ回るかを決める理由がなく、補助巻線とコンデンサーのような始動装置を別に備えます。
三つ集まると回転する
空間的に 120° 離れた三つの巻線に時間的に 120° ずれた三相電流を流し、各瞬間に三つの磁束ベクトルを足すと、合成ベクトルの大きさはいつも一相の最大値の 1.5 倍で同じで、向きだけが回ります。電流が時間的に一つ進むと合成磁界も空間的にその分回り、電流の時間的な位相がそのまま磁界の空間的な角度になります。二つの相の接続を入れ替える(相順を変える)と回転の向きが逆になり、三つの相電流の大きさが互いに違う(不平衡)と、先端の軌跡が円ではなく楕円になって振動する部分が残ります。
回転速度は同期速度
電流が一周期回るあいだに、いちばん単純な 2 極巻線では回転磁界がちょうど一回転します。極数 P を増やすと磁界の模様が細かくなって一周期に回る角が減り、回転速度もその分下がります。毎分の回転数で書くと同期速度は Ns = 120f / P [rpm] で、電気角と機械角の関係は θ_e = (P/2) θ_m です。60 Hz では 2 極は 3600、4 極は 1800、6 極は 1200 rpm で回ります。
最初の画面に戻ると
三つの振動する磁束の和は、大きさが一定のまま回る一つの磁場でした。各相は自分の軸で振動するだけですが、時間的に 120° ずれた三つを空間的に 120° 開いて足すと、振動する部分は互いに打ち消し合い、回る部分だけが残って一相の最大値の 1.5 倍の大きさで回ります。動く部品が一つもないのに、電流の時間的な位相が磁界の空間的な角度になるのです。その回転速度が同期速度 Ns = 120f/P で、二つの相を入れ替えると向きが逆になります。次の課では、この回転磁場が回転子を引っぱって誘導機の原理になります。
回転磁界は誘導機のエンジンです。固定子が作るこの回転磁場の中に回転子を置くと、回転子は磁場について回りますが同期速度には決して届かず、その遅れが滑りです。滑りがあってはじめて回転子の導体が磁束を切って電流が誘導され、トルクが生まれます。次の課では、回転磁界と回転子の速度の差から誘導機の原理と滑りを導きます(MC-C2)。