磁気回路と磁気のオームの法則
磁気回路で電流の役割を担うのは誰か
左の脚に巻いたコイルが鉄心に磁束を押し込み、その磁束は鉄心に沿ってひと回りしてコイルに戻ってきます。この流れが電気回路の電流と同じ位置に置かれますが、三つのタブ(磁界の強さ · 磁束密度 · 磁束)のうち、その位置をぴったり埋める量はどれか、というのが最初の問いです。タブを選ぶと、図の中でその量が指すところが金色に変わります。
電気回路と磁気回路は相似
電圧が電流を押すように起磁力 F = NI が磁束を押し、抵抗が電流を妨げるように磁気抵抗が磁束を妨げます。オームの法則 I = V/R の位置に Φ = F/R をそのまま入れると、磁気回路が解けます。起磁力をアンペア回数で数えるのも、コイルを何回巻いてどれだけの電流を流したかが押す力を決めるからです。ただし似ていないところもあります。導線の外の空気は電流をほとんど通しませんが磁束は通してしまうので、磁束の一部が鉄心を外れて空気中へ漏れる漏れ磁束が生じます。また鉄の透磁率は磁束が大きくなると下がる飽和があるため、磁気回路は電気回路ほどまっすぐな比例関係ではありません。
磁気抵抗は何で決まるか
磁気抵抗は電気抵抗 R = l/(σA) とまったく同じ形で、R = l/(μA) です。経路が長いほど大きく、透磁率 μ が大きいほど、また断面 A が広いほど小さくなります。鉄は μ が空気の数千倍なので、同じ起磁力でずっと大きな磁束を通し、そのため磁束は鉄心に沿って集まり回路をなします。この数千倍という比は、金属と絶縁体の電気伝導率の差に比べればごく小さいので、磁束は電流ほどきれいに通り道に閉じ込められません。
小さな空隙が磁気抵抗を支配する
鉄心に 1 mm の空隙を設けただけでも、空気の μ がきわめて小さいため、その短いすき間の磁気抵抗が長い鉄の経路全体に匹敵するか、それを上回ります。図でも空隙を広げるほど磁束の矢印が減って薄くなりますが、これは磁気抵抗が直列に足し合わされ、いちばん大きな項が流れを決めるからです。電動機や発電機の空隙をできるだけ狭くつくるのもこのためで、逆にインダクタやフライバックトランスは鉄心が飽和しないようにわざと空隙を設けます。空隙の縁では磁束が外へふくらんで広がるフリンジングが起こるので、実際の空隙の断面積は鉄心より少し広くとります。
最初の画面に戻ると
電流の位置をぴったり埋めたのは磁束 Φ でした。H は経路に沿って流れを押す圧力なので電圧の側に、B は流れの詰まり具合なので電流密度の側に立ち、位置がずれていました。回路をひと回りする総量だけが電流の役割を果たし、その総量は Φ = NI / R、つまり起磁力を磁気抵抗で割った値です。空隙を広げたときに磁束が減ったのも、この式の分母が大きくなったからです。
磁気のオームの法則は、この科目全体の土台です。次の課ではコイルのインダクタンスが L = N²/R として磁気抵抗に直接かかわり(MC-A2)、変圧器や電動機、発電機の磁束の経路もすべてこうした直列 · 並列の磁気回路として解析します。空隙が磁気抵抗を左右するという感覚は、回転機の空隙設計にそのままつながります。