インバータと PWM 駆動
ON時間の割合を正弦的に変えると平均電圧は
インバータは出力端子を +Vdc または -Vdc にとても速く交互につなぎます。そのままでは粗いパルス列ですが、スイッチングがとても速いので、モータのインダクタンスが高い周波数成分をこし取り、平均に近い電流だけが流れます。変調率のスライダーは ON 時間の比率を正弦的に揺らす幅を決めますが、粗いパルスの中を通る平均(金)がどんな形になるかを先に選んでから、スライダーを動かします。
インバータは直流を交流にスイッチする
三相インバータは、直流母線に半導体スイッチを上下二つずつつないだレグ三つでできています。直流母線を中点を基準に +Vdc と -Vdc の二本のレールとみると、各レグは上のスイッチを入れると出力が +Vdc に、下のスイッチを入れると -Vdc につながります。三つのレグを互いに 120° ずらして運転すると三相交流が得られ、スイッチを周期ごとに一回ずつ入れるだけなら粗い方形波ですが、実際には数キロヘルツでとても速く入り切りします。モータ巻線のインダクタンスがこの高いスイッチング周波数成分をこし取るので、電流には平均にあたる基本波がおもに残り、さざ波は小さくなります。
PWM が平均で正弦波を描く
一つのスイッチング周期の中で出力が +Vdc にとどまる時間の比率をデューティといいます。デューティが半分なら平均は 0 で、デューティが大きければ平均は + 側へ、小さければ - 側へ寄ります。このデューティを一つの出力周期にわたって正弦的に変えると平均電圧が正弦波を描き、デューティをそのように決める方法がパルス幅変調(PWM)です。ふつうは基準正弦波と速い三角波(キャリア)を比べ、基準がキャリアより高いあいだ上のスイッチを入れます。基準正弦波の振幅である変調率 m が出力電圧の大きさを、基準正弦波の周波数が出力周波数を決め、二つは互いに独立なので、電圧と周波数を別々に握れます。基準の振幅がキャリアより大きくなる過変調の領域に入ると、平均は正弦波から外れはじめます。
一つのインバータがすべての機械を回す
誘導機の V/f 制御は、変調率 m を出力周波数に比例させて磁束を一定に保つことであり、同期機やサーボの可変速、BLDC の電子整流も、すべてこのインバータが指令や回転子の位置に合わせて電圧と周波数をつくる働きです。速いスイッチングはスイッチング損失と高調波を生むので、キャリア周波数は損失と高調波のあいだで折り合いをつけて決め、空間ベクトルのような変調法で直流母線の電圧をより無駄なく使います。直流機の整流子が機械的な接点で行っていた整流を、インバータが半導体スイッチで一般化したといえます。磁気回路から始まったこの科目のすべての機械は、結局この一つの装置の上で電圧と周波数によって制御されます。
最初の画面に戻ると
ON 時間の比率を正弦的に変えると、平均が正弦波を描きました。インバータは出力を +Vdc と -Vdc のあいだで速くスイッチングするだけですが、モータのインダクタンスが高い周波数成分をこし取って平均に近い電流だけを流すので、デューティを正弦的に変調すればその平均がなめらかな正弦波になります。基準正弦波の振幅(変調率)が電圧の大きさを、基準の周波数が出力周波数を決めて、一つの直流から電圧と周波数を別々に握り、誘導機の V/f、同期機の可変速、BLDC の電子整流がすべてこの一つの装置の上で動きます。磁気回路の一筋の磁束から出発し、変圧器と回転機を通ってきた電気機器の話は、半導体スイッチが電圧と周波数をつくるこの場所で締めくくられます。
磁気回路の磁束と磁気抵抗から出発し(A)、その磁束をやりとりする変圧器(A)、整流子で電機子の交流を端子の直流に変える直流機(B)、回転磁界の中で滑りを抱えて回る誘導機(C)、速度と周波数を一体に結んだ同期機(D)、そして永久磁石と半導体スイッチがつくる特殊機とインバータ(E)まで来ました。どの機械も磁束と電流がやりとりする力で回り、整流と制御でその力を制御するという一本の幹の上にありました。二十のユニットで描いたこの地図を手にすれば、どんな回転機に出会っても、磁束がどこで生まれ、電流がどこへ流れ、何がそれを制御しているのかをまず問うようになります。