誘導機の原理とすべり
回転子が同期速度に達するとトルクはどうなるか
金色の回転磁場が青い回転子の導体をかすめて通り過ぎる相対運動があってはじめて、導体に電流が誘導されトルクが生まれます。スライダーで回転子の速度を同期速度(1800 rpm)の方へ押すと相対運動が減って誘導も減りますが、その下で、回転子が同期速度にぴったり届いた瞬間にトルクがどうなるかを先に選んでおけます。その答えと理由が、この課の問いです。
相対運動があってこそ誘導する
回転磁場が止まっているか、より遅く回る回転子の導体をかすめて通り過ぎると、導体は磁束を切って起電力を得ます(ファラデー)。短絡された回転子の導体に電流が流れ、この電流が回転磁場の中で力を受けて(F = BIl)回転子を磁界の回る向きへ引っぱります。レンツの法則どおり、誘導電流の生む力は原因である相対運動を減らす向きに働くので、回転子は磁界と同じ向きに速くなります。回転子の導体をアルミニウムの棒でつくり両端を輪で束ねた形がリスのかごに似ているので、かご形回転子と呼びます。
同期速度は捕まえられないウサギ
回転子が速くなるほど回転磁場との相対運動が減って導体が磁束を切る速さが落ち、誘導電流とトルクがいっしょに減ります。回転子が同期速度に届けば相対運動は 0 になって起電力も電流もトルクも 0 で、その瞬間に摩擦と負荷に勝てず回転子がまた遅くなり、相対運動とトルクがよみがえります。そのため電動機として回るとき、回転子はいつも同期速度より少し遅い速度で釣り合い、このため誘導機を非同期機と呼びます。逆に外から回転子を同期速度より速く回すと滑りが負になり、機械が電力を送り出す誘導発電機になり、風力発電機の中にはこの方式を使うものもあります。
すべりがすべてを測る
回転子がどれだけ遅れているかを滑り s = (Ns - N)/Ns で測ります。止まっていれば s = 1、同期速度に届けば s = 0 です。回転子の導体が感じる磁束の周波数、つまり滑り周波数は f2 = s·f で、回転子に誘導される起電力とリアクタンスも滑りに比例します。始動の瞬間は s = 1 なので回転子の周波数は電源周波数と同じで、通常運転では滑りがふつう数パーセントなので回転子の周波数は数ヘルツと低くなります。滑り一つで誘導機の電気的な状態が決まります。
最初の画面に戻ると
回転子が同期速度に届くとトルクは 0 になります。誘導は回転磁界が回転子の導体をかすめて通る相対運動から生まれますが、同期速度ではその相対運動が消えるからです。導体が磁束を切れなければ起電力も電流もトルクもなく、トルクがなければ摩擦にさえ勝てずに回転子はまた遅くなり、すると相対運動がよみがえってトルクが戻ってきます。そのため回転子は同期速度に届かないまま、いつも滑り s = (Ns - N)/Ns だけ遅れたところで釣り合います。滑りは、誘導機がトルクを出すために払う代価です。
すべりは誘導機解析の取っ手だ。回転子回路の起電力もリアクタンスもすべりを伴うので、すべりを変数に置けば固定子から見た回転子を一つの等価回路にまとめられる。要は回転子抵抗を R2/s と書くことで、この一項が本当の電気損失と回転子が出す機械出力をともに含む。次のユニットはその等価回路を立てる(MC-C3)。