誘導機の等価回路と R2/s
R2/s の一項は何を含んでいるか
回転子を固定子側に換算すると回転子抵抗は R2/s になり、棒全体が、空隙を越えてきた空隙電力 Pag をすべて消費するこの抵抗です。滑りのスライダーを動かすと棒が赤と金色の二つに分かれますが、どちらが熱として捨てられる本当の銅損で、どちらが軸から出ていく機械出力なのか、それがこの課の問いです。その下で、機械出力を担う項を先に選んでおけます。
回る回転子を静止した回路に
回転子の導体が見る磁束の周波数は滑り周波数 sf です。そのため回転子の誘導起電力は sE2、回転子のリアクタンスは sX2 となり、どちらも滑りを伴います。回転子電流は I2 = sE2 / (R2 + jsX2) で、分子と分母を s で割ると I2 = E2 / (R2/s + jX2) になります。こうして周波数が消え、回転子は止まっているように見え、その代わりに抵抗が R2 から R2/s に変わりました。速度の情報が抵抗の一つの項に移ったわけです。
R2/s を損失と出力に分ける
R2/s を R2 + (R2/s - R2) と書くと、後の項は R2(1-s)/s にまとまる。前の項 R2 は実際の回転子巻線で熱として消える本当の銅損だ。後の項 R2(1-s)/s は回路上では抵抗のように電力を消費するが、実際はその電力が回転子の軸へ出る機械出力だ。静止した回路の中の一つの仮想抵抗が、回る機械のする仕事を代わりに担う。
電力の流れは 1 : s : (1-s)
固定子が空隙の向こうへ送る空隙電力 Pag は、すべて R2/s で消費されます。R2 が占める分が回転子銅損 Pcu2 = sPag、R2(1-s)/s が占める分が機械出力 Pmech = (1-s)Pag です。そのため Pag : Pcu2 : Pmech = 1 : s : (1-s) で、回転子での効率は (1-s) です。滑りが大きいほど銅損が大きくなるので、始動の瞬間 s = 1 では空隙電力がすべて熱になって出力は 0 となり、通常運転で滑りが小さくてはじめて効率が高くなります。Pmech からさらに摩擦損と風損を引くと実際の軸出力になり、巻線形回転子に抵抗を入れて滑りを大きくする速度制御は、増えた滑りの分の空隙電力をその抵抗で熱として捨てています。
最初の画面に戻ると
R2/s の棒を二つに分けたのは滑りでした。回転子が見る滑り周波数を約分して消すと、回る回転子は止まった回路のように見える代わりに抵抗が R2/s にふくらみ、速度の情報がその一つの項に入ります。R2/s = R2 + R2(1-s)/s で、前は熱として捨てられる本当の銅損、後ろは軸から出ていく機械出力を代わりに担う仮想の抵抗です。空隙電力が 1 : s : (1-s) で銅損と出力に分かれるので滑りがそのまま損失のものさしになり、始動(s=1)ではすべてが熱で、滑りが小さくてはじめて効率が高くなります。この一つの回路が、次の課でトルク-速度曲線を描く道具になります。
等価回路はトルクをすべりの関数に変える機械だ。機械出力をトルクに移すと T ∝ sE2²R2 / (R2² + (sX2)²) の形になり、すべりが小さいときトルクはすべりに比例、大きいとき反比例する。その間のどこかでトルクが最大になる。次のユニットはこの式からトルク-速度曲線と最大トルク、始動トルクを読み取る(MC-C4)。