直流電動機のトルクと速度
界磁磁束を弱めると速度はどこへ向かうか
棒の図のように逆起電力 Eb = kΦN が端子電圧 V とほぼ釣り合っているので、速度は N = (V - IaRa)/(kΦ) で決まります。磁束のスライダーを下げる前に、下で速度がどうなるかを先に選んでおくと、Φ が分母にあることから答えを前もって見当をつけられます。直観と式が食い違うその結果が、この課の問いです。
逆起電力は電流を制限するかんぬき
電動機の電機子も磁束の中で回って発電します。この逆起電力 Eb = kΦN は供給電圧に逆らうので、電機子電流は Ia = (V - Eb)/Ra で決まり、逆起電力が大きいほど電流は小さくなります。始動の瞬間は N = 0 なので Eb = 0 となり、電流が V/Ra と非常に大きくなるため、大きな電動機は始動抵抗や下げた電圧で最初の電流を抑えます。逆起電力は電流をせき止めるかんぬきのようなものです。
トルクは磁束と電流の積
磁束の中の導体に電流が流れると力 F = BIl を受け、電機子のすべての導体が受けるトルクを足し合わせると T = kΦIa になります。負荷が大きくなると速度が少し下がり、その分だけ逆起電力が減って Ia = (V - Eb)/Ra が増え、トルクもそれにつれて大きくなって新しい釣り合いに達します。別に調整しなくても電動機が負荷に合わせて動くこの性質は、逆起電力のおかげです。
速度を握る三つのつまみ
N = (V - IaRa)/(kΦ) には取っ手が三つあります。界磁制御は Φ を減らして速度を定格より上げ(定出力、高速)、電圧制御は V を下げて速度を定格より下で幅広く下げ(定トルク)、抵抗制御は電機子に直列抵抗を入れて速度を下げますが、その抵抗での損失が大きく効率が悪くなります。三つとも、同じ一つの式のどの項に手を触れるかの違いです。ただし分巻電動機の界磁回路が切れると Φ がほとんど消えて速度が危険なほど跳ね上がるので、界磁回路にはヒューズや遮断器を別に入れません。
最初の画面に戻ると
磁束を減らしたら速度が上がったのは、逆起電力 Eb = kΦN がほぼ一定の端子電圧に逆らって釣り合わなければならないからです。分母の Φ が小さくなると、釣り合いが取り戻されるのはもっと大きな N です。同じ式 N = (V - IaRa)/(kΦ) で V を下げれば速度は下がり、直列抵抗で IaRa を大きくしても下がります。トルクは T = kΦIa で磁束と電流の積であり、負荷が変わると逆起電力が変わって電流がそれに従うので、トルクが合わせられます。図では IaRa を一定にしていますが、実際に同じトルクを出すには、Φ が減った分だけ電機子電流が大きくならなければならないことも覚えておくとよいでしょう。
逆起電力の釣り合いは、直流電動機が見せるすべての特性の根っこです。界磁を直列につなぐか並列につなぐかで Φ と Ia の関係が変わり、直巻 · 分巻 · 複巻のそれぞれ異なるトルク-速度曲線が生まれます。次の課では、同じ機械を発電機として回したときの外部特性と電圧の確立を扱います(MC-B4)。そこでも出発点は Eb = kΦN です。