電機子反作用と中性軸の移動
ブラシをどこに置けば火花が出ないか
発電機として回る直流機で主磁束(縦)と電機子の横軸磁束(横)が合わさると、合成磁束が回転方向に傾き、磁束が 0 の磁気的中性軸(金色の点線)もその分ずれます。整流は磁束が 0 のところで起こらなければならず、タブでブラシを三つの位置に置いてみると、火花が消える位置は一つだけです。それがどこか、それがこの課の問いです。
電機子も磁石になる
負荷がかかると電機子巻線に電流が流れ、その電流が作る電機子起磁力の軸はブラシ軸、つまり幾何学的中性軸の方を向きます。主磁束が磁極から電機子へ縦に通るとすれば、電機子磁束はそれと直角な横向きです。この横軸磁束が電機子反作用の出発点です。
二つの磁束のベクトル和が中性軸を押す
主磁束と電機子の横軸磁束は直角なので、合成磁束は二つのベクトル和の分だけ傾き、磁束密度が 0 になる磁気的中性軸も合成磁束と直角を保ちながら幾何学的中性軸から同じ角度だけずれます。発電機では回転方向に、電機子電流の向きが逆になる電動機では回転と反対方向にずれます。ずれの角は電機子電流が大きいほど大きくなり、図の傾きはある一つの負荷での例です。片方の磁極端には磁束が集まって飽和し、反対側は弱まるので、全体の磁束が少し減ることもあります(減磁作用)。
整流を守る三つの補正
ブラシを新しい磁気的中性軸へ移せばその負荷では整流がきれいになりますが、負荷ごとにずれの角が違うので、そのたびに動かさなければなりません。補極は幾何学的中性軸の位置に置いた小さな磁極で、電機子電流と直列に巻かれているため負荷に合わせて強さが変わり、整流コイルにちょうどよい逆向きの起電力を作って火花をなくします。補償巻線は磁極面のスロットに入れて電機子の横軸磁束をその場で打ち消すので、磁束がゆがむこと自体を防ぎます。大きな機械ほど補極と補償巻線を併用します。
最初の画面に戻ると
火花が消えたのは、ブラシを回転方向へ移して磁気的中性軸に合わせたときだけでした。電機子の横軸磁束が主磁束とベクトルとして合わさって合成磁束を傾け、磁束 0 の中性軸をその分押しやります。整流は磁束が 0 のところで起こらなければならないので、そのままのブラシはずれて火花を出します。B1 の整流子がゼロ交差で接続を切り替えるという約束を電機子反作用が揺るがすわけで、そのためブラシを動かすか、負荷に関係なく効く補極と補償巻線でゼロ交差を元の位置に保ちます。
電機子反作用は直流機の悩みの種であり、設計の腕の見せどころでもあります。中性軸と磁束を押さえたので、次は同じ機械を電動機として回したときに磁束と電機子電流が生むトルクと速度へ進みます。次の課では、トルク T ∝ Φ·Ia と速度 N ∝ (V - IaRa)/Φ の関係、そして界磁を変えて速度を調整する方法を扱います(MC-B3)。