seegongsik
EM-26 · 伝送線路

伝送線路と特性インピーダンス

短い回路では電圧が回路のどこでも一斉に変わるが、信号の波長に匹敵するほど長い線路では電圧と電流が波として走る。その波の電圧と電流の比が特性インピーダンス Z₀ = √(L/C) で、波が届いた負荷が Z₀ と違うと一部が反射して戻ってくる。戻ってくる量を決める反射係数 Γ がいつ消えるのかを確かめる。

負荷を合わせて反射を消す

左から送った電圧の波が伝送線路に沿って右の負荷へ走り、薄い二本の線は波が揺れる幅の縁を表す。スライダーで負荷インピーダンス Z_L を特性インピーダンス Z₀ から遠ざけると、波の一部が戻ってきて進む波と重なり、縁がふくらむところとくびれるところが交互に現れる定在波になる。Z_L を Z₀ に合わせると負荷が緑に変わって反射が 0 になり、縁がまっすぐに伸びる。反射が消える条件は何か、それがこの課の問いである。

負荷インピーダンス Z_LZ_L = 130Ω
ドラッグで視点が回り、スライダーで負荷(Z_L)を変える。
特性インピーダンスと反射
Z₀ = √(L/C) · 伝送線路上の電圧と電流の波の比
Γ = (Z_L − Z₀)/(Z_L + Z₀) · 整合(Z_L = Z₀)すれば反射は 0
負荷 Z_L 130Ω · 特性 Z₀ 50Ω · 反射係数 Γ 0.44 · 定在波比 SWR 2.6
不整合 · 反射大

回路ではなく波

スイッチを入れると電圧が回路全体に一斉にかかると考えてよいのは、線が信号の波長よりずっと短いときの話である。携帯電話の基板を走る高周波信号や、放送アンテナへ向かう長い給電線のように線の長さが波長に匹敵してくると、電圧と電流はもはや一つの塊として動かない。一端での変化が光より少し遅い速さで線に沿って広がっていくので、同じ瞬間でも線の場所ごとに電圧が違う。このように扱わなければならない線を伝送線路と呼ぶ。線の長さが波長のおよそ十分の一を超えたらこの効果を考える、というのがよく使われる目安である。

分布した L と C、そして Z₀

伝送線路の二本の導体は、単位長さごとにインダクタンス L とキャパシタンス C を持っている。導体に電流が流れるとまわりに磁場ができてインダクタンスになり、二本の導体の間に電圧がかかると電場ができてキャパシタンスになる。小さな L と C がはしごのように果てしなく連なった形なので波を運ぶことができ、損失がなければ波の速さは v = 1/√(LC)、電圧と電流の比は特性インピーダンス Z₀ = √(L/C) である。Z₀ は導体の太さと間隔、間を満たす物質で決まり、線の長さには関係しない。同軸ケーブルはふつう 50Ω、テレビのアンテナ線のような放送用は 75Ω しかし、空気を満たした同軸線路で損失がいちばん小さい値と耐えられる電力がいちばん大きい値の間をとった折衷が前者で、損失を減らす側に寄せて選んだのが後者である。

観察Z₀ = √(LC)
特性インピーダンスは電圧の波と電流の波の比である。
選ぶv = ?
波の速さは単位長さあたりの L と C で決まる。

反射係数 Γ

波が線の端の負荷に届くと、負荷の両端の電圧と電流の比は負荷が決める Z_L でなければならない。入ってきた波だけではその比は Z₀ なので、Z_L が Z₀ に等しければ、波は線が果てしなく続いているかのようにすべて吸収される。これが整合である。Z_L が Z₀ と違うと、入ってきた波だけではその条件を満たせないので戻っていく波も生じ、入ってきた波に対するその割合が反射係数 Γ = (Z_L − Z₀)/(Z_L + Z₀) である。負荷が開放なら(Z_L = ∞)Γ = +1、短絡なら(Z_L = 0)Γ = −1 で、どちらでも波は丸ごとはね返る。開放端では電圧が同じ符号で、短絡端では符号が反転して戻ってくる。

空欄Γ = ?
反射係数は負荷が Z₀ からどれだけずれているかを測る。

定在波

進む波と反射して戻る波が重なると定在波ができる。線に沿って、いつも大きく揺れるところ(腹)とほとんど動かないところ(節)が四分の一波長の間隔で交互に現れる模様である。この模様がどれだけでこぼこかを定在波比 SWR = (1 + |Γ|)/(1 − |Γ|) で測り、完全に整合すると Γ = 0、SWR = 1 で模様がなくなめらかになり、送った電力がすべて負荷に入る。抵抗負荷なら、SWR は Z_L と Z₀ のうち大きいほうを小さいほうで割った値に等しくなる。反射が大きいほど SWR は大きくなり、戻ってきた電力が送信機を熱したり信号をゆがめたりするので、高周波の設計ではいつも整合を目指す。

自分でSWR = ?
定在波比は反射が作る模様のでこぼこを測る。

最初の画面に戻ると

最初の画面で、負荷 Z_L を特性インピーダンス Z₀ から遠ざけるほど、進む波と戻ってきた波が重なって定在波の腹と節がはっきりした。Z_L を Z₀ に合わせた瞬間、反射係数 Γ が 0 になって模様が消え、波はなめらかに流れた。伝送線路の上で電圧と電流は波であり、その比が Z₀ = √(L/C) である。負荷がこの比をそのまま受け入れれば反射はなく、ずれていれば Γ = (Z_L − Z₀)/(Z_L + Z₀) の分だけ戻ってくる。整合こそ、送った電力を残らず負荷へ渡す道である。

伝送線路は二本の導体の間に電磁波を閉じ込めて送る線で、長さが波長に匹敵すると電圧と電流が波として走る。その波の電圧と電流の比が特性インピーダンス Z₀ = √(L/C) で、波の速さは v = 1/√(LC) である。負荷が Z₀ と違うと反射係数 Γ = (ZL − Z₀)/(ZL + Z₀) の分だけ反射して定在波ができ、整合(ZL = Z₀)すれば Γ = 0 となってすべての電力が伝わる。
次へ続く道

負荷ごとに反射係数 Γ を手で計算する代わりに、あらゆるインピーダンスと反射を一枚の円盤の上に広げてひと目で読む道具がある。次の課(EM-27)ではそのスミスチャートを扱う。複素インピーダンスが円と弧で描かれ、線に沿って負荷から離れると点が円に沿って回る、その地図に慣れていく。