スミスチャート
インピーダンスをチャート上の一点に
二つのスライダーで抵抗 r とリアクタンス x を変えると、正規化インピーダンス z = r + jx がスミスチャート上に金色の点として打たれ、中心からその点まで金色の線が伸びます。その線が長いほど反射が大きく、短いほど反射が小さくなります。r を 1 に、x を 0 に合わせると点が真ん中の緑の整合点に乗りますが、そのとき反射係数がどうなるか、それがこの課の問いです。
反射を絵に
前の課で、反射係数 Γ は負荷ごとに複素数として出てきました。複素数は平面上の一点なので、あらゆる負荷の Γ を一つの平面に打つことができ、受動負荷なら |Γ| ≤ 1 なので、それらの点は半径 1 の円盤の中にすべて収まります。スミスチャートは、まさにこの Γ 平面にインピーダンスを読める曲線の目盛りを重ねた地図です。1939 年にフィリップ・スミスが発表してから高周波技術者の基本の道具になりましたが、それより少し前に日本の水橋東作も同じ考えの図表を発表していました。計算機が身近になった今も、ネットワークアナライザーのような測定器の画面にこのチャートがそのまま使われています。
正規化インピーダンスと Γ
一枚のチャートをどの線路にも使えるように、インピーダンスを特性インピーダンスで割った正規化インピーダンス z = Z/Z₀ = r + jx を使います。r は抵抗、x はリアクタンスです。この z を Γ = (z−1)/(z+1) で移すとチャート上の一点になり、中心(z = 1)は Γ = 0、つまり完全な整合点です。右端(z = ∞)は Γ = +1 で開放、左端(z = 0)は Γ = −1 で短絡です。上半分は誘導性(x > 0)、下半分は容量性(x < 0)です。
抵抗円とリアクタンス弧
チャート上の曲線の目盛りで、インピーダンスを直接読み取れます。抵抗が一定の点(r = 定数)は円をなし、どれも右端の一点で出会います。リアクタンスが一定の点(x = 定数)は、その端点から伸びる弧をなします。ある点がどの抵抗円とどのリアクタンス弧の交わるところにあるかを見れば、そのインピーダンスの r と x をすぐに読み取れます。外側の縁は抵抗がまったくない円で、純粋なリアクタンスだけの負荷はすべてここに乗ります。
線に沿って回る点
スミスチャートの本当の力は、線路をたどるときに発揮されます。負荷から電源のほうへ線路をさかのぼると、その地点から見たインピーダンスはチャート上で中心のまわりを時計回りに回る点として現れ、損失のない線路なら |Γ| は変わらないので、同じ半径の円に沿って回ります。半波長(λ/2)進むと、点はちょうど一周して元の場所に戻ります。この円が右側の横軸と交わる点の抵抗値がそのまま定在波比であり、点を中心の反対側へ移すとそのインピーダンスの逆数、つまりアドミタンスになるので、並列に付ける素子を扱うときに使います。こうして、線路のどの位置でインピーダンスがいくらになるか、整合素子をどこに入れればよいかを、チャート上で点を回しながらすぐに見つけられます。
最初の画面に戻ると
最初の画面で抵抗 r とリアクタンス x を動かす間、インピーダンスはチャート上の一点として打たれ、中心から遠いほど反射が大きくなりました。r を 1、x を 0 に合わせて点を真ん中に乗せた瞬間、反射係数が 0 になりました。そこが整合点です。スミスチャートは複素数の計算 Γ = (z−1)/(z+1) を一枚の円盤の上の幾何に置き換え、インピーダンスを読む、線路に沿って回す、整合を設計するといった仕事をすべて目で行えるようにします。
スミスチャートを身につけると、インピーダンスと反射を複素数で別々に計算するのではなく、一枚の図の上で扱えるようになります。次の課(EM-28)のインピーダンス整合も、結局はこのチャート上で負荷の点を中心へ移す仕事です。λ/4 変成器やスタブを入れたときにチャート上の点がどう動くかをたどると、整合設計がチャート上の道探しであることが分かります。