磁性体と磁化
μ_r を上げて磁場の強まりを見る
磁性体の棒を外部磁場の中に置いた。比透磁率 μ_r を上げてみよう。中の原子磁石はどれだけそろうか。正味の磁場(金色の矢印)はどうなるか。
磁性体とは
すべての物質の原子には、電子の運動とスピンに由来する小さな磁気モーメント、すなわち原子サイズの磁石がある。ふだんはこの小さな磁石が思い思いの向きで互いに相殺し、正味の磁場はない。しかし外部磁場をかけると、場の向きにそろい始める。電流ではなく、すでにある原子磁石を整列させるのだ。こうして磁石になる性質を磁性という。
磁化 M、モーメントの整列
外部磁場をかけると、無数の原子磁石が場の向きにそろう。そろい具合を単位体積あたりの磁気モーメントで表したものが磁化 M だ。EM-10 の誘電体の分極 P とよく似た概念だ。ただし分極は電荷がわずかにずれたもので、磁化はもともとある磁石が整列したものだ。そろった原子磁石が一方向を指せば、その磁場はすべて同じ向きに加わる。
正味の場が強まる
ここで誘電体と決定的に分かれる。誘電体の束縛電荷は外部電場と逆向きの場を作って電場を弱めた。一方、そろった原子磁石は外部磁場と同じ向きの場を加えて磁場を強める。だから正味の磁場は外より強い。強まる倍率が比透磁率 μ_r だ。B = μ_r B₀。常磁性体は μ_r が 1 より少し大きく、強磁性体(鉄・ニッケル)は数百から数千に達し、磁場を桁違いに強める。反磁性体は μ_r が 1 より少し小さく、むしろ弱く押し返す。
透磁率、H と B
磁化を分けて扱うために磁場の強さ H を使う。磁束密度 B は外部からかけた H と物質が加えた磁化 M を合わせたものだ。B = μ₀(H + M)。線形磁性体では M が H に比例し B = μH と整い、透磁率は μ = μ_r μ₀ だ。H は自由電流が作る部分、B は磁化まで加えた実際の場と考えればよい。強磁性体は非線形で、いったん磁化されると戻りにくい履歴(ヒステリシス)を示し、永久磁石や記録媒体の基礎になる。
最初の画面に戻ると
最初の画面で μ_r を大きくすると、中の原子磁石がより鮮明にそろい、正味の磁場を表す金色の矢印はどんどん長くなった。そろった磁石が外部磁場と同じ向きに場を加えたからだ。強まる倍率がまさに μ_r だ。B = μ_r B₀。誘電体が電場を和らげたのとは正反対に、磁性体は磁場を強める。だからコイルに鉄心を入れるとインダクタンスが μ_r 倍跳ねる(EM-17)。
静磁界の最後のかけらはエネルギーだ。コイルや磁性体に蓄えられたエネルギーは、実は磁場そのものの中にある。次のユニット(EM-19 磁気エネルギー)でこれを磁場のエネルギー密度 u = B²/(2μ) として見る。静電エネルギー u = ½εE² の磁気版であり、コイルの ½LI² もここから出る。これで静磁界の七つのかけらが終わり、時変界とマクスウェルへ進む。