インダクタンス
電流を速く変えて逆起電力を見る
コイルに流れる電流の変化率をスライダーで大きくしてみよう。電流をゆっくり変えるときと速く変えるときで、コイルが生む逆起電力はどう違うか。電流が一定(変化率 0)なら逆起電力はいくらか。
磁気的な慣性
コイルに電流を流すと、そのまわりと内部に磁場が生じ(EM-13・14)、コイルを貫く磁束 Φ がたまる。この磁束は電流に比例する。電流を変えようとすると磁束も変わらねばならないが、コイルはその変化を嫌う。重い物体が速度変化を嫌うように、コイルは電流変化に逆らう。この磁気的な慣性の大きさがインダクタンス L だ。
自己インダクタンス L = NΦ/I
コイルが N 回巻かれていれば、磁束は N 重に電流と鎖交する。この磁束鎖交を電流で割ったものがインダクタンスだ。L = NΦ/I。電流が二倍なら磁束も二倍なので L は変わらない。L は電流や磁束ではなく、コイルの幾何、すなわち巻数・断面積・長さ・中を満たす物質で決まる。静電容量 C が幾何で決まったのとまったく同じ構造だ。
変化に逆らう逆起電力
電流が変わると磁束が変わり、変わる磁束はファラデーの法則(EM-20)により起電力を生む。コイルではこの起電力は ε = -L dI/dt だ。マイナス符号が肝心だ。起電力は常に電流の変化を妨げる向きに生じる(レンツの法則)。電流を増やそうとすれば抑え、減らそうとすれば引き留める。だからコイルの電流は急には変われず、滑らかに変わる。変化が速いほど(dI/dt 大)逆起電力は強い。
コイルのエネルギー
コイルの電流を増やすには逆起電力に逆らって仕事をせねばならず、その仕事がエネルギーとして蓄えられる。蓄積エネルギーは U = ½LI² だ。コンデンサの ½CV² とよく似ている。このエネルギーはコイルが作る磁場の中にある(EM-19)。ソレノイドのインダクタンスは L = μ₀N²A/l で、巻数の二乗に比例する。中を磁性体で満たすと L はさらに大きくなる(EM-18)。だからインダクタは電子回路で電流を滑らかに整え、エネルギーを一時的に蓄える部品として使われる。
最初の画面に戻ると
最初の画面で電流をゆっくり変えるとコイルの逆起電力は小さく、速く変えるほど急に大きくなった。逆起電力が変化率に比例するからだ。ε = -L dI/dt。電流が一定のとき(変化率 0)は逆起電力も 0 だった。その比例定数 L がコイルの磁気的な慣性、すなわちインダクタンスだ。L は電流ではなくコイルの幾何で決まり(L = NΦ/I)、コイルはこの慣性で電流を急な変化から守る。
コイルの中を磁性体(鉄心など)で満たすと、磁化により磁場が μr 倍になり、その分インダクタンスも大きくなる。誘電体が静電容量を上げたことの磁気版だ。次のユニット(EM-18 磁性体・磁化)で磁化 M と比透磁率 μr を扱う。コイルに蓄えた ½LI² は EM-19 磁気エネルギーで場のエネルギーとして見直す。