勾配
最も急な上りを探す
傾いた電位の地形の上で試験の矢印を回してみよう。どの向きへ進むと最も急に上るか。等高線(等電位線)に沿うと傾きはいくらか。
勾配、最も急な上り
スカラー場は各点に数を一つ与える(EM-02・EM-08)。勾配 ∇V はその数が最も速く増える向きを指し、矢印の長さがその向きの傾きの大きさだ。丘の地形で最も急に上る方向を一本の矢印で表したものだ。一つのスカラー場から一つのベクトル場が生まれる。
方向微分、内積で
ある向き û へ動くときに電位が変わる割合を方向微分という。その値は勾配とその向きの内積 ∇V·û だ(EM-05 の内積と同じ原理)。û が ∇V とそろえば余弦が 1 で最大、直角なら 0 だ。だから等電位線に沿うと変化率は 0、勾配を正面からたどると最大になる。その最大の大きさがまさに |∇V| だ。
等電位面と直角
変化率が 0 の向きが等電位線なので、勾配は常に等電位面に垂直だ(EM-08 で見た通り)。地形の等高線と最も急な上りが直角に交わるのと同じだ。だから勾配は向き(等電位面の法線)と大きさ(傾き)を一度に担う。
E = -∇V、スカラーからベクトルへ
電場は電位が最も速く減る方を指すので、勾配のちょうど逆だ。E = -∇V。マイナス符号が上りを下りに反転する。この一行がスカラー場 V からベクトル場 E をまるごと取り出す。電位一つを知れば電場の三成分が微分で得られる。逆に電場を経路に沿って積分すれば電位に戻る。
最初の画面に戻ると
最初の画面で試験の矢印を回すと、上りの傾きは向きごとに違った。等電位線に沿うときは 0、勾配とそろうとき最大だった。その最大の向きと大きさを一度に担うのが勾配 ∇V だ。方向微分 ∇V·û が余弦でそれを語る。電場はこの勾配を下りに反転した E = -∇V で、だから常に等電位面に垂直だった。
勾配はスカラー場からベクトル場を取り出す道具だ。装着すれば、電位 V から電場 E = -∇V を直ちに得て(EM-08 を回収)、ポテンシャルのあるあらゆる問題で場を微分で求める。発散 ∇·(EM-07)と回転 ∇×(EM-16)とともにナブラ演算子 ∇ の三つの使い方をなし、マクスウェル方程式の微分形を支える。