ファラデーの法則
輪を回して誘導起電力を見る
水色の矢印が一様な磁場で、その中に置いた輪の角度をスライダーで決めます。輪が場に正面で向き合うと(磁束最大)金色の電流の矢印が消え、縁を立てると(磁束 0)矢印が最も長くなります。磁束が最も大きいときに起電力が最も小さいのはなぜか、それがこの課の問いです。
磁束が変わると電流が流れる
静電場と静磁場を扱っている間、電気と磁気は別々の場として計算してきました。ファラデーは、磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりしている間だけコイルに電流が流れ、磁石を止めると何も起こらないことを見つけました。電流を生んだのは磁場そのものではなく、その変化だったのです。発電機や変圧器、エレキギターのピックアップ、電池を持たずに読み取り機から電気を受け取る交通系 IC カードも、この発見から生まれました。
磁束とその変化
輪を貫く磁束は Φ = ∫B·dA で、輪の面を垂直に貫く磁場を面全体で足し合わせた量です(EM-05)。ファラデーの法則は、誘導起電力がこの磁束の変化率に負の符号を付けたものに等しいと述べます。ε = -dΦ/dt。磁束を変える方法は三つあり、磁場 B を変える(磁石を動かす、電流を増やす)、輪の面積を変える、輪を回して面の向きを変える、のいずれかです。どの場合も起電力を決めるのは磁束が変わる速さだけで、磁束が大きいか小さいかは関係ありません。コイルを N 回巻けば同じ変化が巻き数の分だけ足され、起電力も N 倍になります。
負の符号とレンツの法則
式の前の負の符号が誘導電流の向きを決めます。誘導電流はいつも、自分を生んだ磁束の変化を妨げる向きに流れます。これがレンツの法則です。磁石の N 極を輪に押し込むと、輪の電流はその極を押し返す磁場を作り、磁石を引き抜くと引き止める向きの磁場を作ります。もし誘導電流が変化を助ける向きに流れたら、小さな揺れがひとりでに大きくなり、何も与えなくてもエネルギーが湧き続けることになるので、レンツの法則は電流の向きで書いたエネルギー保存だと言えます。発電機から電流を取り出すと回すのが重くなるのも同じ理由で、輪から取り出す電気エネルギーは回す側がした仕事から来ています。
発電機と微分形
輪を一定の角速度 ω で回すと、磁束は Φ = BA cosωt で振動し、起電力は ε = -dΦ/dt = BAω sinωt になります。これが発電機の出す正弦波の交流です。最初の画面のとおり、輪が場に正面で向き合い磁束が最大の瞬間は変化率が 0 なので起電力も 0 で、縁を立てて磁束が 0 の瞬間は変化が最も速いので起電力が最大です。ファラデーの法則を一点で書くと微分形 ∇ × E = -∂B/∂t になり、変化する磁場のまわりに渦巻く電場ができることを表します(EM-16 の回転)。ただしこの図のように磁場はそのままで導線が動く場合は渦巻く電場はなく、起電力は動く導線に運ばれる電荷が受けるローレンツ力から生じます。どちらの場合も一つの磁束の規則で同じ値が出ることが、ファラデーの法則の便利なところです。
最初の画面に戻ると
最初の画面で輪を場に正面で向けたとき(磁束最大)誘導起電力は 0 で、縁を立てたとき(磁束 0)最も大きくなりました。起電力は磁束の大きさではなく、磁束が変わる速さに従うからです。磁束が最大の瞬間は上りが下りに変わる山の頂上で、変化が一瞬止まるので起電力は 0 になり、磁束が 0 を通る瞬間は曲線が最も急なところなので起電力が最大になります。だから磁束(cos)と起電力(sin)は四分の一周期ずれます。ε = -dΦ/dt。変化する磁束が電気を生みます。
ファラデーの法則は、変化する磁場が電場を作るという話でした。マクスウェルはその逆も成り立つかを問い、変化する電場も磁場を作るという答えにたどり着きました。その項が変位電流(EM-21)です。アンペールの法則にこの項を加えると電気と磁気の式が対になり、二つの場が互いを生み出しながら何もない空間を進む電磁波が可能になります。