アンペールの法則
輪を大きくしても循環は変わらない
金色の導線が上向きに電流を流し、導線を囲む円がアンペールの輪です。輪の上の小さな矢印が磁場で、スライダーで輪を大きくすると磁場は 1/R で弱まりますが、周は 2πR で長くなります。そのため循環 ∮B·dl は表示器の上で変わりません。ボタンで導線を輪の外に出すと、循環は消えます。
アンペールの法則とは
EM-13 で、直線電流のまわりの磁場が同心円を描くことを見ました。アンペールの法則はこれを一行にまとめます。磁場を閉じた輪に沿って一周足した量、つまり循環 ∮B·dl が、その輪を通る電流だけに比例するというものです。∮B·dl = μ₀ I_enc。比例定数 μ₀ は真空の透磁率です。ガウスの法則が電束と電荷を結んだように、アンペールの法則は循環と電流を結びます。ただしこの形は電流が時間とともに変わらないときの法則で、電流が変わるときは、あとで出会う変位電流を加えなければなりません。
ループの大きさによらない
導線を囲む輪を二倍にすると、輪の上の磁場は半分に弱まりますが(B = μ₀I/(2πR))、一周の長さは二倍になります(2πR)。二つを掛けた循環は変わりません。へこんだ輪でも四角い輪でも同じで、同じ電流を囲みさえすれば循環はいつも μ₀I です。循環を決めるのは、囲んだ電流だけだからです。
ループを貫く電流だけ
導線が輪の外にあると、輪を一周するあいだに、磁場が輪の向きと同じ側を向く区間と逆側を向く区間ができます。二つの区間の寄与はぴったり打ち消し合い、循環は 0 です。そのためアンペールの法則は、輪を実際に通る電流だけを数えます。輪の外にどれほど大きな電流があっても、循環には加わりません。ただし輪の上の各点の磁場 B そのものは外の電流の影響を受けるので、対称性がなければ、法則は成り立っても磁場をすぐには求められません。
対称なら積分なしで B
対称性がよければ、アンペールの法則はビオ・サバールの積分の近道になります。直線電流のまわりに、電流と同じ中心の円形の輪をとると、磁場は輪の上で大きさが一定で輪の向きと平行なので、循環はすぐに B·(2πr) にまとまります。ここから B = μ₀I/(2πr) が出ますが、EM-13 で積分によって求めた直線電流の結果とぴったり同じです。ソレノイドは長方形の輪で B = μ₀nI が得られ、トロイドも同じやり方で解けます。EM-01 で身につけた、対称性に合う経路の選び方が鍵です。
最初の画面に戻ると
最初の画面で、アンペールの輪を大きくしても循環はびくともしませんでした。輪の上の磁場が 1/R で弱まった分だけ周が 2πR で長くなり、ぴったり打ち消し合ったからです。導線を輪の外に出すと循環は 0 に落ちましたが、それは輪を回るあいだに足した寄与と引いた寄与がつり合ったということです。結局、循環を決めるのは輪の大きさや形ではなく、その輪を通る電流だけです。∮B·dl = μ₀I_enc。
ここまでは、電流が磁場をつくる側を見てきました。ビオ・サバール(EM-13)もアンペール(EM-14)も、電流 → 磁場の法則です。次のユニットからは逆に、磁場が動く電荷に力を及ぼす側を見ます。磁気力とローレンツ力 F = qv × B (EM-15)で、磁場の中の電流が受ける力もここから出てきます。