MOSFETの小信号モデル: 二乗曲線の傾き
動作点を上げて接線が急になるのを見る
曲線は飽和領域の Id-Vgs の二乗則で、しきい電圧から立ち上がります。オーバードライブを大きくすると動作点 Q が曲線に沿って上がり、Q で曲線に当てた接線がだんだん急になります。その傾きがトランスコンダクタンス gm で、ゲート電圧の小さな揺れがドレイン電流をどれだけ揺らすかを表します。
飽和ではIdはVgsの二乗
飽和領域でドレイン電流は、ゲート電圧に沿って二乗で曲がりながら上がります。Id = (1/2)k(Vgs - Vth)²、つまりオーバードライブの二乗です。曲線ですが、BJT の小信号のとき(C3)と同じ考え方が使えます。動作点のまわりのごく狭い区間だけを切り出すと、なめらかな曲線はどれもその接線である直線に見えます。ゲート電圧の小さな揺れ vgs は、その直線の関係に沿ってドレイン電流の揺れ id をつくります。
傾き gm = k Vov = √(2k Id)
二乗曲線を動作点で微分すると、接線の傾き、つまりトランスコンダクタンスが gm = k(Vgs - Vth) = k Vov と出てきて、オーバードライブにそのまま比例します。一方 Id = (1/2)k Vov² なので、同じ値を電流で書くと gm = √(2k Id) になります。ここで BJT との大きな違いが現れます。BJT は gm = Ic/VT で電流にそのまま比例しましたが、MOSFET の gm は電流の平方根でしか大きくなりません。gm を二倍にするにはドレイン電流を四倍使わなければならず、同じ電流ならふつうは BJT の gm のほうが大きくなります。
入力は開いている、ゲート電流0
BJT の小信号モデルには入力抵抗 rπ がありました。ベースに信号電流が流れたからです。しかし MOSFET のゲートは絶縁されていて(D1)信号電流が事実上入らないので、入力側には rπ にあたる抵抗がなく、入力は開放、つまり無限大に近いインピーダンスです。そのため小信号モデルはとても単純で、入力はただ開いていて、出力にはゲート電圧に比例する電流源 id = gm vgs が一つあるだけです。この巨大な入力インピーダンスのおかげで、MOSFET は増幅器の前段やデジタル論理に向いています。
最初の画面に戻ると
オーバードライブを大きくするほど、動作点は二乗曲線の急なほうへ上がり、Q に当てた接線はだんだん立っていきました。その接線の傾きがトランスコンダクタンス gm で、値は k Vov、電流で書けば √(2k Id) でした。BJT の gm が電流にそのまま比例したのと違い、MOSFET の gm は電流の平方根でしか大きくならないという違いがそこにありました。さらに絶縁ゲートのおかげで入力には電流が入らないので、モデルには rπ がなく、出力の電流源 gm vgs だけが残りました。この簡潔な線形の箱を、次の回路に組み込む番です。
次へつながる流れ
入力が開いていて出力は電流源一つだけの、単純な線形の箱が手に入りました。次のユニットでは、この箱をソース接地増幅器に組み込みます。ゲートの小さな信号がドレイン電流を揺らし、その電流がドレイン抵抗を流れて大きな出力電圧をつくるので、エミッタ接地(C4)とまったく同じ形で電圧利得 Av = -gm Rd が出てきます。