動作領域: 抵抗から電流源へ
ドレイン電圧を上げて二つの顔を見る
曲線はゲートをオンにしたまま描いた Id-Vds 特性です。ドレイン電圧が小さいうちは電流が比例するようにまっすぐ上がりますが、ドレイン電圧がオーバードライブに達すると曲線は膝のように折れて平らになります。左の線形の範囲から右の飽和の範囲へ、その膝を自分で通り過ぎてください。
遮断と線形、オンのチャネルは抵抗
Vgs がしきい値より下ならチャネルがなく、電流が 0 の遮断です(D1)。チャネルができたあとドレイン電圧をわずかにかけると、チャネルはソースからドレインまでほぼむらなくつながった導体の層で、その層に電圧をかければオームの法則のように Vds にほぼ比例する電流が流れます。このときチャネルの抵抗値はゲート電圧が決めるので、MOSFET は電圧で値を変える抵抗というわけです。デジタルスイッチのオン抵抗やアナログスイッチは、まさにこの領域を使います。
ピンチオフ、ドレイン側のチャネルが閉じる
Vds を上げると、チャネルに沿ってソースからドレインへ行くほど電位が高くなります。チャネルを開いている力はゲートとチャネルの間の電圧ですが、ドレインの近くではチャネルの電位が高いので、この値はだんだん小さくなります。Vds がオーバードライブ Vov = Vgs - Vth に達すると、ドレインの端でゲート・チャネル間電圧がちょうどしきい値まで下がり、そこのチャネルの厚さは 0 になります。チャネルがもうドレインに届かないこの状態がピンチオフです。
飽和、電流が平らになる
ピンチオフを超えて Vds をさらに上げても、ピンチ点がわずかに内側へ移るだけで、チャネルが運ぶ電流はほとんど変わりません。そのため電流が平らになる飽和領域となり、このとき電流の大きさは Vds ではなくオーバードライブで決まり、二乗則 Id ≈ (1/2) k Vov² に従います。実際の素子ではピンチ点が移った分だけチャネルが短くなり、飽和の範囲も少しずつ上へ傾きます。MOSFET が Vgs で制御される電流源のようにふるまうこの領域が、BJT の活性領域にあたる増幅の場所です。
最初の画面に戻ると
ドレイン電圧が低いとき曲線はまっすぐ上がり、その範囲で MOSFET はゲートで値の決まる抵抗でした。ドレイン電圧をオーバードライブまで上げると曲線は膝で折れましたが、それはドレイン側のチャネルの端がピンチオフした瞬間でした。その上は電圧をさらにかけても電流がほとんど変わらない平らな飽和で、そこで MOSFET は Vgs で大きさの決まる電流源になりました。一つの素子がオンのままでも抵抗と電流源という二つの顔をもち、その境目はドレイン電圧がオーバードライブに届くかどうかで分かれます。
次へつながる流れ
飽和領域で MOSFET は Vgs で制御される電流源でした。次のユニットでは BJT のときと同じように、その動作点のまわりの小さな揺れだけを切り出して線形化します。小さなゲート電圧がつくる小さなドレイン電流、その比例定数が MOSFET のトランスコンダクタンス gm で、増幅へ向かう同じ道を MOSFET でもう一度たどります。