利得帯域幅積: 利得と速さは引き換え
閉ループ利得を下げると帯域が広がる
薄く斜めに下がる直線は、周波数が上がるほど下がる開ループ利得です。横軸は周波数の対数、縦軸はデシベルの目盛りです。太い線は帰還で決めた閉ループ利得で、平らに進んだあと開ループ利得の直線と出会うところで折れ、一緒に下がっていきます。その折れ点の周波数が帯域幅で、閉ループ利得を下げるとこの点が右へ移ります。
無限利得は偽り、利得は落ちる
理想的な演算増幅器は利得が無限大だと学びましたが、実際の素子は違います。低い周波数では開ループ利得がとても大きい(よく十万倍前後)ものの、ドミナントポールと呼ばれる低い周波数を超えると、周波数が 10 倍になるたびに利得が -20 dB、つまり 10 分の 1 に下がります。多くの演算増幅器は発振しないように内部に補償用のコンデンサを入れ、わざとこの極を低く置いています。横軸を対数でとったボード線図では、開ループ利得は平らなあと一定の傾きで下がる直線になり、この直線が利得 1、つまり 0 dB と交わる周波数が単位利得周波数です。
閉ループ利得を下げると帯域が広がる
帰還をかけると、閉ループ利得は自分で選んだ値で平らにとどまります。しかし周波数が上がって、その平らな線が斜めに下りてくる開ループ利得の直線に届くと、素子にはその利得を支える余裕がなくなり、そこから開ループ利得に沿って一緒に下がります。その出会う点の周波数が閉ループ増幅器の帯域幅です。だから閉ループ利得を下げると、平らな線がより低いところに置かれ、開ループの直線とより右の、より高い周波数で出会い、帯域幅がその分広がります。グラフは二本の直線で描いた近似で、実際の曲線はこの点の近くで丸く曲がります。
利得 × 帯域 = 一定 = GBW
開ループ利得の直線の傾きが一定なので、閉ループ利得とその帯域幅の積は、どこで切っても同じ値になります。その値が、開ループ利得が 1 に下がる単位利得周波数で、これを利得帯域幅積 GBW と呼びます。積が一定になるのは、一つの極が応答を支配する演算増幅器の話です。GBW は素子が生まれつき持つ仕様なので、大きな利得がほしければ狭い帯域を、広い帯域がほしければ小さな利得を受け入れなければなりません。正確に言えば、割る値は帰還回路のノイズゲインで、非反転増幅器では閉ループ利得と同じ、反転増幅器では利得の大きさに一を足した値です。一段で両方を大きくすることはできないので、もっと必要なら利得を何段かに分けて重ねるか、GBW のもっと大きな素子を使います。
最初の画面に戻ると
閉ループ利得を高くしたとき、平らな線は早く開ループ利得の直線と出会い、狭い帯域で折れました。利得を下げると折れ点が右へ滑り、帯域が広がりました。その間ずっと利得と帯域幅の積は少しも変わりませんでしたが、それは開ループ利得が一定の傾きで下がるからです。その決まった積が GBW、つまり利得が 1 に下がる単位利得周波数です。無限大の利得という理想は低い周波数でしかほぼ当てはまらず、実際には利得と速さを引き換えにしなければなりません。これが演算増幅器の最初の現実的な限界です。
次へつながる流れ
GBW は、小さな信号がどれだけ高い周波数までついていけるかを決める限界でした。信号が大きいと、また別の壁が現れます。次のユニットでは、出力電圧が単位時間あたりに変われる最大の速さであるスルーレートと、出力が電源レールを越えられない電圧の限界を扱います。小信号の限界と大信号の限界は、原因が互いに違います。