ダイオードI-V: 一方向だけに流れる弁
電圧を掃引して曲線をたどる
スライダーでダイオードにかかる電圧を変えると動作点が曲線上を動き、縦の補助線がそのときの電圧の位置です。左の逆方向の範囲では曲線はほとんど平らで、右の順方向の範囲ではある点から急に立ち上がります。その折れ曲がる膝がどのあたりかを自分で探してください。
外部電圧が障壁を動かす
A4 で接合は自ら内部の障壁を築きました。そこに外から電圧を加えます。p 側に正、n 側に負をかけると(順方向)外部電圧が内部の障壁を削って下げ、逆にかけると(逆方向)障壁をさらに高くします。結局、流れを決めるのはキャリアが越えなければならない障壁の高さです。
順方向、電流が指数的に立ち上がる
障壁を越えるキャリアの数は障壁の高さに指数関数的に依存します(A1 のボルツマン因子と同じ形)。そのため順方向電圧が障壁を少し下げるだけでも電流は爆発的に増え、シリコンダイオードでは約 0.7 V 付近で曲線が膝のように折れて急に立ち上がります。これがショックレーの式の exp(V/VT) の項です。
逆方向と整流
逆方向では障壁がさらに高くなって多数キャリアがほとんど越えられず、ごく小さな飽和電流 -Is だけが流れます。結局ダイオードは、順方向には大きな電流を、逆方向にはほぼ 0 を流す一方通行の弁です。交流をかけると正の半周期だけを通して脈流の直流に変え、これが整流で、身近な電源アダプタで交流を直流に変える最初の段階です。逆方向電圧を大きくしすぎると、あるところで電流が急に流れる降伏が起こりますが、これはツェナーダイオードのユニットで扱います。
最初の画面に戻ると
スライダーを逆方向に置いたとき曲線は平らで、順方向へ動かすと膝を過ぎて急に立ち上がりました。同じ素子なのに、電圧の向き一つで流れがまったく変わったのです。その非対称の根は A4 の障壁です。外部電圧は障壁を削るか高くするだけですが、障壁を越えるキャリアの数が指数関数的に反応するので、曲線は一方向にだけ急増します。この一方通行の弁が、交流を直流に変える整流の要です。
次へつながる流れ
一方通行の弁が手に入りました。次のユニットでは、この弁で信号の形をつくります。一定の電圧を超えた部分を切り取るクリッピングと、波形全体の基準線を動かすクランピングで、ダイオード一つがオンとオフを切り替えるだけで信号を整える道具になります。