小信号モデル: 近くで見れば曲線も直線
信号を小さくしてきれいな相似形を探す
薄い曲線は入力であるベース・エミッタ間電圧の揺れ、太い曲線は出力であるコレクタ電流の揺れです。信号が大きいと、出力は山がとがり谷が平たくゆがみます。振幅を小さくして、出力が入力と同じサイン形になる大きさを探してください。
動作点で曲線を拡大すると直線
コレクタ電流はベース・エミッタ間電圧に沿って指数関数的に曲がりながら上がります。それでも動作点のまわりのごく狭い区間だけを切り出して拡大すると、なめらかな曲線はどれもその接線、つまり直線に見えます。小信号とは、まさにこの狭い区間の中にとどまる揺れのことで、その中では入力と出力が直線の関係、つまり線形です。
接線の傾き、gm = Ic/VT
その接線の傾きがトランスコンダクタンス gm です。指数関数は微分しても自分自身に比例するので、傾きは動作点のコレクタ電流を熱電圧で割った gm = Ic/VT になります。そのため C2 で選んだバイアス電流が大きいほど接線が急になって gm が大きくなり、同じ小さな入力でもより大きな出力電流が出てきます。動作点がそのまま利得のつまみというわけです。
小信号等価モデル
これでトランジスタを一つの線形の箱に描き替えられます。入力側はベース電圧をベース電流で割った入力抵抗 rπ = β/gm に見え、出力側は ic = gm vbe = β ib の電流源です。値の変わらない DC 電源は信号にとっては揺れがないので、交流的には接地として扱います。この等価回路が次のユニットで利得を計算する道具で、信号が狭い区間を出ない間だけ成り立ちます。
最初の画面に戻ると
信号が大きいとき、出力は山がとがり谷が平たいゆがんだ波形でした。指数曲線の曲がりがそのまま映ったものです。振幅を熱電圧よりずっと小さくすると、その狭い区間で曲線は直線のように見え、出力は入力をそのまま写したきれいなサインになりました。その直線の傾きが gm で、おかげでトランジスタは入力抵抗 rπ と電流源 gm vbe だけをもつ線形の箱になります。大きな DC は位置を決める台で、その上の小さな揺れだけが、これから計算する信号です。
次へつながる流れ
これでトランジスタを線形の箱に置き換える方法がわかりました。次のユニットでは、この箱を実際の回路であるエミッタ接地増幅器に組み込みます。入力信号がベースを揺らすと電流源がコレクタ抵抗に電流を流して大きな出力電圧をつくり、小信号モデルでその電圧利得をはじめて自分で計算します。