伝達関数と一般化インピーダンス
一つの極が過渡と遮断を共に定める
左は RC ローパス回路で、コンデンサを一般化インピーダンスで見ると H(s) = (1/sC)/(R + 1/sC) = 1/(1+sRC) です。分母を 0 にする極は s = −1/(RC) = −1/τ で、右の s-平面の負の実軸上に描いたバツ印がその位置です。時定数 τ を動かして、バツ印を点線の円の目標 s = −2 に合わせてください。その極こそが過渡の速さ e^(−t/τ) であり、周波数の遮断 ω_c = 1/τ です。
jω を s に広げる
正弦波定常状態では、インピーダンスを jω で書きました。インダクタは jωL、コンデンサは 1/jωC です。この jω を複素周波数 s = σ + jω に広げると、インダクタは sL、コンデンサは 1/sC になります。s = jω とおけば(σ=0)正弦波定常状態にそのまま戻り、s が実部 σ をもてば、大きくなったり消えていったりする過渡まで同じインピーダンスの中に収まります。抵抗は周波数に関係しないのでそのまま R で、この一度の拡張によって定常状態と過渡を同じ言葉で扱えるようになります。
回路は s の分圧
一般化インピーダンスで見ると、直列につないだ二つの素子はやはり分圧器です。RC ローパスで出力をコンデンサの両端から取り出すと H(s) = Vout/Vin = Z_C/(Z_R + Z_C) = (1/sC)/(R + 1/sC) です。分子と分母に sC を掛けて整理すると H(s) = 1/(1 + sRC) となり、分圧の一行がそのまま回路の伝達関数というわけです。インダクタを sL として入れても、もっと複雑な回路でも、インピーダンスで書いた分圧と合成がそのまま H(s) をつくります。
一つの式、三つの顔
伝達関数 H(s) = 1/(1+sRC) は三通りに読めます。第一に、s = 0(DC)で H = 1 なので直流利得は 1 で、ゆっくり変わる信号はそのまま通ります。第二に、s = jω とおくと H(jω) = 1/(1+jωRC) となり、大きさが ω = 1/RC で 1/√2 に折れるローパスの周波数応答です。第三に、分母を 0 にする極 s = −1/RC が過渡を決め、スイッチを入れると出力と最終値の差が e^(−t/RC) で縮んでいきます。同じ一つの式が直流利得、周波数の遮断、過渡の時定数を同時に含み、極の位置一つが回路のふるまいをすべて圧縮しているわけです。図で薄く塗った左半平面は、過渡が消えていく安定な領域です。
最初の画面に戻ると
時定数 τ を動かすと極 s = −1/τ が負の実軸に沿って動き、τ = 0.5 で点線の円の目標 s = −2 に届きました。その一つの極が二つのことを同時に決めていて、時間では出力が e^(−t/τ) で落ち着く過渡の速さ、周波数では ω = 1/τ で折れる遮断です。jω を s に広げてコンデンサを 1/sC と見たおかげで、RC ローパスが分圧の一行 H(s) = 1/(1+sτ) で書け、その一つの式が直流利得と周波数応答と過渡を同時に抱えていました。