負帰還と利得の鈍感化
生の利得を大きくするほど利得は 1/β に固定される
生の利得(開ループ利得) A を動かそう。負帰還をかけた閉ループ利得は G = A/(1+Aβ) で、β は出力のうち入力へ戻す割合だ。A が小さいと G も小さいが、ループ利得 Aβ が1をはるかに超えると G は A に依らず 1/β に近づき固定される。β = 0.1 なので理想利得は10だ。A を上げて閉ループ利得を理想値10に届かせよ。
帰還が利得を削る
増幅器の生の利得 A はとてつもなく大きいが、部品ごとに違い、温度や周波数で揺れる。そのままでは信用できない。負帰還は出力の一部 β を入力で引いて戻す。すると増幅器が実際に見る入力は減り、閉ループ利得は G = A/(1+Aβ) と生の利得より小さくなる。分母の Aβ をループ利得と呼び、信号が増幅器と帰還回路を一周するとき掛かる全体の大きさだ。
ループ利得が大きいと増幅器が消える
ループ利得 Aβ が1よりはるかに大きいと、分母 1+Aβ ≈ Aβ となり G = A/(Aβ) = 1/β に簡単になる。閉ループ利得から A が約分されて消えたのだ。だから利得は増幅器の気まぐれな A ではなく、抵抗数本で精密に定めた帰還の割合 β の逆数になる。非反転増幅器で 1/β = 1 + Rf/Rg が利得だったのがまさにこの結果で、仮想短絡も結局同じ話を回路の言葉で語ったものだ。
鈍感化が精度を買う
A が二倍に跳ねても閉ループ利得はほとんど動かない。正確には G の相対変化が A の相対変化の 1/(1+Aβ) に減る。ループ利得が大きいほど鈍感だ。だから我々は安く巨大だが不正確な生の利得を、負帰還を通じて小さいが精密で安定した利得に変える。理想オペアンプの仮想短絡があれほどよく合う理由もこれだ。A が事実上無限大でループ利得が圧倒的に大きく、閉ループが 1/β に完全に固定されるからだ。負帰還は余る利得を精度と安定性に変える取引だ。
最初の画面に戻ると
生の利得 A を動かすと閉ループ利得 G も最初は一緒に育ったが、ループ利得 Aβ が1を超えると G は育つのをやめ、理想値 1/β = 10 に近づき固定された(β = 0.1)。A をさらに大きくしても G は10あたりから動かなかった。閉ループ利得から A が約分されて消え、精密な β だけが残ったのだ。巨大だが信用できない生の利得が、負帰還を経て小さいが信用できる利得に変わった。すべてのオペアンプ回路が仮想短絡できれいに解けた理由がまさにこの鈍感化だ。