相互インダクタンスと結合係数
どれだけ磁束を分け合うか
左の金色のコイルに電流が流れ、右のコイルはその磁束を受けます。左のコイルだけを囲む淡い輪は横へ漏れ出る磁束で、二つのコイルをまとめて囲む金色の大きな輪は両者が分け合う磁束です。結合係数 k を 0 から 1 まで上げると、淡い輪が一本ずつ金色の輪に変わります。
自己から相互へ
コイル一つは、自分の電流が作った磁束を自ら鎖交させます。これが自己インダクタンス L です。隣にもう一つコイルを置くと、その磁束の一部が二つ目のコイルも通り抜けます。二つ目のコイルを通る分を表す量が、相互インダクタンス M です。
k は鎖交する割合
一方のコイルが作った磁束のうち、もう一方のコイルを通るのは一部だけで、残りは横へ漏れ出る漏れ磁束です。図で左のコイルだけを囲む淡い輪が、まさにこの漏れ磁束です。鎖交する割合を結合係数 k と定義すると、0 ≤ k ≤ 1 です。k = 0 なら二つのコイルは磁気的にまったく無関係で、k = 1 なら一方のコイルの磁束が余さずもう一方を通る理想変圧器になります。
なぜ天井が √(L₁L₂) なのか
二つ目のコイルに届く磁束は、一つ目のコイルが持つ磁束を超えられず、逆向きについても同じです。両方向の結合をあわせて考えると、M は二つのインダクタンスの幾何平均 √(L₁L₂) で頭打ちになります。そこで M = k√(L₁L₂) と書き、k は M がその天井までどこまで上がったかを 0 から 1 の間の数で表します。この図の二つのコイルは L₁ = 40 mH、L₂ = 10 mH なので、天井は 20 mH です。
電圧にも現れる結合
正弦波定常状態では、二つのコイルの電圧は V₁ = jωL₁I₁ + jωMI₂、V₂ = jωMI₁ + jωL₂I₂ として互いに結びつきます。両方の式に現れる M の項が、二つの回路をつなぐ橋の役目をします。M が大きいほど、一方の電流がもう一方の電圧に強く表れます。
最初の画面に戻ると
k を 0 から 1 へ上げると、淡い漏れ磁束線が一本ずつ、二つのコイルをまとめて囲む金色の鎖交磁束線に変わりました。その割合こそが k で、M は天井 √(L₁L₂) に k を掛けた分だけ上がりました。k = 1 ではすべての磁束線が二つのコイルを通り、M は天井に届きました。結合とは結局、磁束をどれだけ分け合うかという問題です。