理想変圧器と巻数比
巻数比は電圧を上げた分だけ電流を下げる
一次電圧 V1 = 10V は固定だ。巻数比 n = N2/N1 を動かして二次コイルの巻数を変えよう。二つのコイルが同じ磁束を共有するので二次電圧は V2 = n·V1 と巻数比に正比例して上がり、同じ電力を保つため二次電流は 1/n に下がる。二次電圧が目標 25V に届くよう巻数比を合わせよ。
完全結合が理想変圧器
相互インダクタンスで見たように、結合係数 k が1なら一方のコイルの磁束がもれなく他方を通る。漏れもコア損失もないとすれば理想変圧器だ。二つのコイルが同じ磁束 Φ を共有するので、各コイルに誘導される電圧はその巻数に比例する。一次は N1 巻、二次は N2 巻が同じ Φ の変化を受けるので、V1 は N1 に、V2 は N2 に比例する。両者の比をとると V2/V1 = N2/N1、これを巻数比 n と呼ぶ。
電圧を上げると電流が下がる
理想変圧器はエネルギーを蓄えも失いもしないので、入る電力と出る電力が等しい。V1·I1 = V2·I2 だ。二次電圧が n 倍になると、この等式を保つため二次電流は 1/n 倍にならねばならない。I2/I1 = N1/N2 = 1/n。だから変圧器は電圧を上げた分だけ正確に電流を下げる。送電で電圧を数十万ボルトに上げて送る理由がここにある。同じ電力をより小さい電流で運べば、電線から漏れる I²R 損失がその分減るからだ。
インピーダンスは二乗で変わる
二次に負荷 Z_L を付けると一次から見たインピーダンスはいくらか。一次インピーダンスは Z_in = V1/I1 だ。V1 = V2/n と I1 = n·I2 を入れると Z_in = (V2/n)/(n·I2) = (V2/I2)/n² = Z_L/n² だ。巻数比の二乗でインピーダンスが変わる。だから変圧器はインピーダンス整合の道具になる。内部インピーダンス Z_s の電源に負荷 Z_L を合わせるには、n = √(Z_L/Z_s) の変圧器を挟んで Z_L を Z_s のように見せればよい。オーディオ出力段や RF で最大電力を引き出すときによく使う手だ。
最初の画面に戻ると
巻数比 n を動かすと二次コイルの巻数が増えて二次電圧 V2 が n·V1 と上がり、n = 2.5 で目標 25V に届いた(V1 = 10)。同じ電力を保つため二次電流は 1/n に下がったので、変圧器は電圧と電流をちょうど入れ替えた。負荷インピーダンスはその二乗 1/n² で変わって見えた。完全結合した二つのコイルが巻数比一つで、電圧は比例、電流は反比例、インピーダンスは二乗と一度に操る。相互インダクタンスの k = 1 の天井がまさにこの素子だった。