差動増幅器と同相除去
出力は二つの入力の差にだけ反応する
V1 = 1V は上側の反転入力側に固定され、V2 は下側の非反転入力側から入ります。抵抗比で決めた差動利得は 2 です。V2 を動かすと出力側の矢印が Vout = 2(V2 − V1) に合わせて伸び縮みし、二つの入力の差だけに反応します。V2 が V1 と等しくなると出力は 0 になります。出力が白い点線の目標 6V に届くように V2 を合わせてください。
一方は+へ、もう一方は−へ
反転増幅器は入力を一つだけ、しかも反転入力で受けていました。差動増幅器は二つの信号を両方の入力に分けて入れ、V2 は R3 を通って非反転(+)入力へ、V1 は R1 を通って反転(−)入力へ入ります。非反転入力の電位は R3 と R2 が V2 を分けた値で決まり、仮想短絡が反転入力もその電位に合わせます。すると V1 から R1 を通って入ってくる電流が決まり、その電流が Rf を通って出力を決めますが、抵抗がそろっていればその結果は二つの信号の差だけに反応します。
共通で入ったものは消える
二つの入力に同じ信号が一緒に乗る場合、たとえば並んで走る二本の線が一緒に拾ってきた雑音を、同相モードといいます。差 V2 − V1 が 0 なので、同相モードは出力に出てきません。ただしこの打ち消しが完全になるには、抵抗が正確にそろって Rf/R1 = R2/R3 でなければならず、抵抗が少しずれるだけでその分の同相モードが出力に漏れ出ます。そのため差動増幅器は、遠くから弱い信号を二本の線で引いてくるとき、二本に同じように乗った雑音を消して信号の差だけを大きくします。この同相除去の能力が計装増幅器の心臓部です。
差動利得と純粋な引き算
抵抗がそろった差動増幅器の出力は Vout = (Rf/R1)(V2 − V1) です。前の Rf/R1 が差動利得で、差をどれだけ大きくするかを決めます。四つの抵抗をすべて等しくすると利得が 1 になって Vout = V2 − V1、つまり二つの電圧をそのまま引く減算器になります。反転増幅器が符号を反転させ、非反転増幅器が符号を保ったとすれば、差動増幅器は二つの道を合わせて一方の入力を引き、もう一方を足すことになり、雑音に強い測定回路の基本ブロックになります。
最初の画面に戻ると
V2 を動かすと出力の矢印は 2(V2 − V1) として伸び、V2 = 4V で目標 6V に届きました(V1 = 1)。V2 が V1 と等しくなる位置では出力が 0 だったので、出力が差だけに反応することを目で確かめたことになります。一方の信号を + に、もう一方を − に入れたこの構造が、二本の線に同じように乗った雑音を消し、差だけを大きくします。反転と非反転の道を合わせた差動増幅が、弱い信号を遠くからきれいに引いてくる計測の基本ブロックです。