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CM · 変調の基礎

なぜ変調するのか

声のような低い周波数の信号をそのまま電波にすると、アンテナには数十キロメートルの長さが必要になり、すべての放送が同じ低い帯域に集まって混ざり合います。信号に搬送波を掛けて周波数軸の上へ移せば、この二つの問題が一度に解けます。

空いた周波数に自分の放送局を入れる

図は周波数軸に沿って描いたスペクトルです。左端の点線の山が移す前のベースバンド信号、灰色の二つの山がすでに放送している局 A と局 B です。搬送波周波数を動かすと、自分の信号の山がその周波数へまるごと移ります。隣と重なると赤、近いと橙、きれいに離れると金色になります。

搬送波周波数 fcfc = 0.30
最初は局 A と重なって赤くなっています。二つの局のちょうど中間か右端に置くと金色になります。
掛け算が生む周波数の移動
S(f) = ½ M(f − fc) + ½ M(f + fc)
重なり

ベースバンドのままでは何が困るのか

アンテナが電波をよく放射するには、長さが波長の1/4程度は必要です。声は数キロヘルツなので波長は数十から数百キロメートルにもなり、そんなアンテナは建てられません。さらに、すべての局が同じ低い帯域を使えば、受信機には多くの声が混ざって聞こえます。図の左にある点線の山が、まさにこのベースバンドの位置です。

掛け算がスペクトルを移す

信号 m(t) に搬送波 cos(2π fc t) を掛けると、m のスペクトルは形を保ったまま周波数軸の上を fc だけずれます。図でベースバンドの山と自分の信号の山を結ぶ金色の点線矢印が、この移動を表しています。時間領域での一回の掛け算が周波数領域では位置の移動になる、というのが変調の核心です。

観察s(t) = m(t) × cos(2π fc t)
搬送波を掛けることが変調です。
選ぶm(t) × cos → M(f − ?)
時間での積は周波数での移動になります。

だから多くの信号を並べて積める

局ごとに異なる搬送波周波数を与えれば、それぞれのスペクトルは別々の場所へ上がります。隣り合う搬送波の間隔が帯域幅より広ければ、山どうしは重なりません。図の局 A と局 B の間にある、自分の信号が入るすき間がまさにそうした場所です。このように周波数を分けて使う方式を周波数分割多重といいます。

空欄S(f) = ½ M(f − fc) + ½ M(f ? fc)
コサインには +fc と −fc の二つの成分があるので、スペクトルの複製も二つできます。図は正の周波数側だけを描いています。
自分でBtot = ?
帯域幅 B のチャネルを N 本並べると、全体の帯域は N×B です。

最初の画面に戻ると

最初、自分の信号は局 A と重なって赤く表示されていました。搬送波周波数を上げて二つの局のすき間に置くと山は金色に変わり、その幅はベースバンドの山と同じでした。搬送波を掛けて、スペクトルをまるごと空いた場所へ移したからです。変調とは、信号を周波数軸上の空いた場所へ載せ替えることにほかなりません。

変調とは、信号 m(t) に搬送波 cos(2π fc t) を掛けて、そのスペクトルを fc だけ上へ移すことです。形は保たれ位置だけが変わるので、局ごとに異なる fc を使えば、多くの信号を重ならないように多重化できます。

次のユニットで

スペクトルを移す掛け算はこれで決まりました。次の AM では、同じ掛け算を時間軸上の波形として見ます。搬送波の振幅に信号を載せると、波形の山を結んだ曲線、つまり包絡線が元の信号の形をなぞります。