標本化と PCM
いくつかの点から元の信号はよみがえるか
淡い青の曲線が元の信号、明るい点が標本、太い曲線は標本だけを見て復元した信号です。標本化周波数を上げると点が詰まっていきますが、信号周波数の二倍を超えるまでは、太い曲線は標本を通る遅い偽の正弦波として描かれ、赤く表示されます。二倍を超えた瞬間から、金色の曲線が元の信号とぴったり重なります。
標本は点だ
標本化とは、連続信号を一定の時間間隔ごとに一度ずつ読み取り、その値だけを書き留めることです。なめらかだった曲線が、図の明るい点いくつかにまで減ってしまいます。すると当然、次の疑問がわきます。点と点の間をすべて捨てたのに、どうやって元の曲線を取り戻せるのでしょうか。
ナイキスト ―― 二倍より速く
その答えが標本化定理です。信号の最高周波数が fmax のとき、fs > 2 fmax で標本化すれば標本だけから元の信号を完全に復元でき、この境界値 2 fmax をナイキスト率と呼びます。標本化周波数がこれに届かないと、fmax 付近の成分が fs/2 より下の帯域へ折り返して入り込み、同じ標本を通るもっと遅い正弦波のように見えます。このように周波数の正体が入れ替わる現象がエイリアシングで、一度折り返した信号は、標本だけからは本当の周波数を取り戻す手立てがありません。
PCM ―― 量子化と符号化
標本はまだ連続的な値なので、そのままではビットで書けません。PCM は、各値を L 個の段階のうち最も近いものへ丸める量子化を行い、各段階を n = log₂ L ビットで符号化します。1 秒間に fs 回標本化するので、ビットレートは R = n fs になります。丸めで生じた誤差が量子化雑音で、段階数 L を増やしてビットを多く使うほど小さくなります。標本化で時間を、量子化で値を細かく区切って信号を数に変える、それが PCM です。
最初の画面に戻ると
標本化周波数を上げると点が詰まり、信号周波数の二倍を超えた瞬間に復元した曲線が元の信号と重なって金色に変わりました。それより低いときは、同じ標本を通るもっと遅い正弦波が現れ、赤く化けていました。標本化で覚えておくことは一つです。点の間を捨てても fs > 2 fmax なら何も失わず、この境界を破ると高い周波数が偽の低い周波数へ折り返し、二度と元に戻せません。
次のユニットで
これでメッセージはビットの流れになりました。次の課題は、このビットで搬送波をどう揺らすかです。ビットに応じて搬送波の振幅をオンとオフにすれば ASK、周波数を二つの値の間で切り替えれば FSK、位相を反転させれば PSK になります。次のユニットでは、ディジタル変調のこの三つの系統を並べて比べます。